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私たちの事情を知らない人が見れば、彼女は間違いなく美女なので、ああやって年寄り扱いをすると本気で怒られる。
そして"本名"と"おばあちゃん"は禁句で、何故かリリーと呼ぶように小さい頃から躾けられている。
「深緋っ!」
駅の改札を通り抜けたところで、同級生の大路 白翔に呼び止められた。
柔らかそうな茶髪を揺らし、彼は綺麗な二重の目を細めた。
「おはよ、白翔」
「おう」
この子は今年同じクラスになったことで仲良くなった友達だ。
いや、クラスが同じという理由で仲良くなったわけではない。
偶然にも私の家の三軒向こうに住んでいる。
今の家に引っ越して来たのは、丁度一年前のこと。
私とおばあちゃんはご近所さんの目を考えて四年、ないしは五年に一度住処を変えている。
ちなみに、私、朝比奈 深緋が高校生を演じるのはこれで十回目だ。
十六歳から二十歳までの四年間をこれまでに九回繰り返し、その都度引っ越しも兼ねてきた。
なぜ高校生を繰り返すかって?
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