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25歳の誕生日を迎えた時、小島は処女を失った。
捧げたという言い方に近いのかもしれないが、それからの付き合いはわずか1年間であった。
橋場第二中学校の同級生、寺内柊太は友人の間でも話題に上がるほど浮ついた男で、卒業式以来会っていないという女性にも連絡を取って体を重ねていた。そんな彼から久しく連絡が来たのは春と夏の間。気温が安定した頃だった。
池袋のカフェで向かい合って話した彼の目には欲望だけが渦を巻いており、性への探究心が人よりもあった小島は彼を弄ぶことにした。すぐに手を出せるだろうと思っていた女性に振り回され、ベッドの上で泣き噦りながら絶頂を迎えた寺内の表情はとても愉快だったと記憶している。
しかしそれから彼との付き合いは非常に淡白だった。
セックスフレンドとなって会う度に体を重ねる日々。様々なプレイを提案しても彼はいつも正常位で最後を迎えてしまう。それが小島にとってひどく虚しいものだったのだ。どんな幼稚園児だって粘土で同じものばかりを作っていれば退屈だと感じる。寺内はオーソドックスな怪獣を作り過ぎたのだ。そんな彼との関係に終わりが来るのは当然の事だった。
彼に何も言うことなく次の生活の場所を選び、すぐに退職届を会社に提出して引っ越しを決める。埼玉県秩父郡長瀞町が今小島の住んでいる町だが、東京とは打って変わって澄んだ街並みだった。子どもが無邪気に配置したような高いビル群も無ければ、やたらと混じる排気の数だって極端に少ない。住めば都、あれだけ都会のOLに憧れていた自分が嘘のようだった。
昔から社会の成績は良かった。江戸時代から縄文時代に至るまで、人間は変化を続けていく中でどのようなセックスをしていたのか。そういった性の歴史を調べていくうちに様々な知識が身に付き、長瀞駅から徒歩数分のところにある指導塾ステパップでアルバイトをすることになった。もちろん東京に比べて時給は安いものの、人手が足りないということで歴史の授業全てを任された小島は線路沿いのアパートで充分な暮らしを続けている。激動の日本社会から離脱したような気分は居心地が良かった。
歴史を教える高校生たちは男女問わず初心で、東京での暮らしを話すとかなりリアクションが良い。だからこそ小島は性行為の経験が無いであろう生徒をターゲットにして、寺内のような被害者を生み出そうとも考えてはいたが、どうもその一歩が踏み出せずにいた。
田舎は情報が広まりやすいと聞く。もし生徒と肉体関係を結んでそれが発覚すれば、あっという間に小島の居場所は無くなるだろう。もうすぐここに来て4年が経つ。ようやく慣れた町を手離すのは惜しい。
だからこそ小島は4年の月日をかけて、処女に戻っていたのだ。
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