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寺内とセックスフレンドの関係が数ヶ月続き、その頃から吸い始めたタバコを燻らせてペダルを漕いでいく。片岡と出会った山の中は教室を思わせる騒めきに満ちていた。葉が重なって擦れる夏の音。ネイビーのギャザースカートが風で翻り、白い足が外気に触れる。薄い黄色のブラウスは時折背中が膨らんでいた。
やがて頂上に辿り着くと、目の前の鳥居に沿うような形で片岡の自転車が置かれていた。濃い青空を切って貼ったようなフレームが眩しい。隣に鈍色の自転車を止めて神社の裏手に回った。
「やっほ。」
教科書を足の上に広げていた片岡が咄嗟に顔を上げた。何故か照れ臭そうな表情を見せた後に顔を伏せる。彼の左隣に腰を下ろした。薄暗い日陰となっているおかげか妙に涼しい。彼の教科書に目を落とすと、江戸時代末期に登場した偉人たちが並んでいた。
「今そこ習ってるの?」
「いや、予習しておこうかなって…。」
やはり彼はだいぶ緊張しているようだった。ページの端を掴む手がどことなく震えている。小島は耳を舐めるように柔らかく言った。
「ここ、きちんと覚えておいた方がいいよ。よくテストで扱われるから。」
何気なく指差した先には坂本龍馬の活躍が綴られていた。軟膏を塗るように指を滑らせていく。すると妙な感覚があった。大政奉還が行われ、天皇が奏上を勅許したという文章の真ん中が軸となって不自然な丘が出来ている。それが何かをすぐに察した小島はより滑らかな声で言った。
「俊輔くん、ここすごく硬いよ。」
天と皇の間を指の腹で撫で回すと、片岡は喉の奥から絞ったような吐息と声を漏らした。この愛撫が不敬罪に当たるかどうかは分からないが仕方ない。片岡は教科書の裏で確かに勃起している。指先を立てて天皇の単語を割るように強く押すと、彼の体がびくんと跳ねた。もうすぐ死んでしまう小魚が最後に活力を見せたようでおかしく思える。
「小島さん…気持ちいい…。」
「可奈子でいいよ。ねぇ、もっと触って欲しい?」
小さく頷く片岡は既に腰回りが薄く痙攣しているようだった。教科書を手にとって縁に置き、彼の舟形に指を這わせる。ファスナーを壊してしまいそうなほど膨らんだ彼自身は布越しでもしっかりと熱い。片岡の左肩に顎を乗せ流と薄く制汗剤の香りがした。夏の教室、水泳の授業が終わって皆に眠気が襲った懐かしい午後。金具を摘むようにして引き下ろすと、赤いボクサーパンツが見える。引き出しの奥からペンを探るようにして片岡のペニスを解放させた。
「もうこんなに大きいじゃん。」
そう言って彼の耳に舌先を宛てがう。鼓膜に直接流し込む唾液の音と柔らかい声。左手で握りしめたペニスは息をかける度に激しく震えた。
「可奈子さん、あっ…。」
先端が赤くなった肉樹をゆっくりと扱く。親指の腹で溢れ出る透明な液体を掬い取り、全体に馴染ませた。潤滑剤の役割を果たした為にペニスを包む皮をゆっくりと剥ぐ。だいぶ敏感になっているのか、片岡はひどく苦しそうに悶えていた。
「いきそう…です。」
より雁首が膨らみを帯びる。風船の上で大量の粘液を垂らして滑らせているような音が立て続けに鳴った。手に脈動を感じたところで、小島は熱を持つ鉄の棒から手を離した。トランポリンを指先で叩いたようにペニスが跳ねて片岡は情けない声を上げる。手に付着した彼のカウパー腺液を舐めると、遠くに海の味がした。
「俊輔くん。これからオナニーするの禁止ね。全部私の言う通りにして、いい?」
5年前に都内の水族館、アザラシが空間を泳いでいく真ん中で寺内に自慰行為を禁止させた日が瞼の裏に蘇る。20代半ばで素直にオナニーをやめた彼は愛くるしかった。
「わ、分かりました…。」
学生服から反り勃ったペニスを露わにする片岡がみっともなく、まるでぬいぐるみのように愛おしく見えて、小島は再び彼の左頬にキスをした。
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