24.( 閑話2 )長太郎目線

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24.( 閑話2 )長太郎目線

「ねえ、(ちょう)ちゃん」 「なに?」  執務室での夕食を終え、皆が各々の部屋に戻っている時、少し遅れて歩いていたぼくに、(しのぶ)が声をかけた。 「長ちゃんはそれでいいの?」 「何が、を聞くべきか?」  前を歩く嘉一(かいち)たちを見ながら、ぼくに問いかけた忍に、質問で返せば、忍が呆れたような表情を浮かべる。 「分かってて聞くよね、長ちゃんって」 「いや、本当に分からないんだが?」 「いいや、絶対に分かってる。頭も勘も良い長ちゃんが分からないわけないじゃない」  そう言って、ぼくの肩をベシッ、と叩きながら忍は言う。 「良いの? 行かなくて」 「良いのも何も護衛ならいまは全員」 「そうじゃなくて! 自分の主人だからって、そこまで譲る必要なんて無いと思うけど、って話!」 「そこまでって、忍、何の話だ?」 「何の話って……え、まさか長ちゃん本当に分かってないの?」 「いやだから、最初から何の話だ、って聞いてるだろ」  嘉一たちを見ながら言った忍の言葉の意味が本当にわからず、思わず立ち止まれば、忍が目をまんまるに見開きながら驚きの表情を浮かべる。 「え、待って。まさかの無自覚?」 「だから何が」 「うーわー、無自覚じゃーん」  顔をおさえながら一人納得したように言う忍に、わけがわからず首を傾げれば、「あー、でもそっかー」やら「いやでも待てよ」などと忍がぶつぶつと一人呟き始める。 「おい、忍?」  大丈夫か? と忍の肩に触れながら言えば、バッ、と急に忍が顔をあげた。 「このスカポンタンのおたんこ茄子ボンボン!」 「茄子ボンボン……?」 「どんだけ鈍いやつばっかり集まってんのよ全く!」 「……?」  はあ、やだやだ、と顔を左右に振りながら言う忍に、「おい?」ともう一度、声をかける。 「長ちゃん」 「だから何って」 「早くしないと、手遅れになるよ?」 「……何を言ってるんだ?」 「ボクは嘉一が一番で、次が自分。でも、護衛の皆とボクも同じ位置。要するに、長ちゃんとボクも同じ位置なんだよ」 「……うん?」 「そりゃ嘉一が幸せになってくれるのが一番だけどね、同じくらいにボクも、皆も幸せになってほしい」 「……忍?」  突然、何の話をしているのだろうか。  急に違う次元の話でもしているかのように、忍との意思疎通ができていない気がするのだが。  思わずずれかけた眼鏡を直せば、「長ちゃん」と忍に再度、名前を呼ばれる。 「見て見ぬふりをして、後悔する前に、長ちゃん自身のことだもの。自分の胸に聞いてみたら?」  トス、とぼくの胸をつつきながら言う忍の言葉がやけに、重たいものに感じた。
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