それぞれの営み〜看取り屋

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あっ…暑い…二郎は駅から歩いて30分の実家に、最近物忘れが酷くなった母の様子を診に、酷暑の中バスを利用せず歩いていた。 突然通り雨が降り出した。幼少期に雨の中一緒に遊んだ友達の事を思い出した。雨に打たれながら、都会での忙しない気持ちが和らいでいった。 家に着くと、一人暮らしを初めた頃に持たせてもらった鍵で、玄関のドアを開け入って行った。 「母さん、ただいま…」 家の中は綺麗に片付いていた。母さんは居間でラジオを聴きながら、庭を眺めていた。 「二郎、よく来たね…お昼まだだろ?チャーハン作ってあるよ。バスを使わないで来たの?濡れちゃって…」バスタオルを差し出してくれた。 「歩きたかったんだ。母さん、お茶ある?」 二郎はお茶を2杯飲み、キッチンのテーブルに置かれたチャーハンをほおほばった。子供の頃よく食べた、干しブドウの入ったカレーチャーハンだった。
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