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しばらく経ち、そろそろ新生活にも慣れてきたかと思う頃。
春呼は、いつも通り職場に向かう途中だった。
「あぁ~っ、早く行かないと、また部長にドヤされるぅ~っ!!」
ピンヒールでカツッカツッと走っている。
「っぅうわぁっ!!」
案の定、つまずいた。
「もぅ...いったぁい...」
ガーン。
せっかく最近買った、お気に入りのパンプスが剥げている。
「あぁ......」
帰ったら、マジックで黒く塗ろ...(黒のパンプスだし)と落胆した。
すると、
「ニャァ~、ニャニャァア~ッ」
と小さな鳴き声を耳にする。
横を見ると、小さな黒猫が一匹捨てられていた。
段ボールに入れられている。
その段ボールの淵には、
もらってください
と太いマジックで書かれている。
「......えぇ......っ」
周りを見渡しても誰もいない。
ちょうど誰も通ってない。
「ちょっと待ってよ...そうよ、そうそう」
「私のマンションはね、ダメなのよ、そう
ダメダメ、ペット禁止なの......」
「だから...ねっ?
お願いだから、そんな顔で見ないでぇ~っ」
「私を許してっ!!子猫ちゃんっ!!」
そう言って、罪悪感を抱きながら、足早に職場へ向かう春呼だった。
その子猫ちゃんをひとり残してー。
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