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「お待ちしておりましたぁ~!!」
不動産屋さんの妹の友達とかいう人がスーツを着て、私たち二人を待ち構えていた。
「やっほ~!!ありがとう!!
連絡くれて~前からここ、気になってたんだぁ~♪」
「それはそれは~本当に直前でキャンセルがでまして...建設済みのため、お部屋の内装等はお選びいただけないのですが...。
お気に召されればと思いまして。よろしければお願い致します。
では、どうぞどうぞ~!!」
ってことで、妹に引っ張られ、言われるがままに...。
中には入ると、ホテルのロビーの様だった。
コンシェルジュ付きのマンションで、入り口から高級感が漂っている。
「はぁ~っ」
姉妹二人でキラキラと目をときめかせている。
続いて、部屋だ。
キャンセルをした方が、モダンな仕様が好きだったようで、春呼の好みにもバッチリだった。設備も最新のもので揃えられており、防犯もバッチリだ。施工会社も有名な建設会社だし...。
なによりも...バスルームに行くと...?
「うわっ!!広い~!!
しっしっ、しかもっ、バスルームに窓が付いてるぅ~っ!!窓側になってるぅ~!!」
つい昨日、バスルームに閉じ込められ、窓もなく圧迫感に苛まれていた春呼は、その解放感に心踊らされていた。
「ここ...おいくらですか?」
「物件価格が、○○○○万円になります。」
(そっか...私の貯金を頭金に...そして、あとはローンで...ブツブツ)
「ここ...私、買いますっ!!」
「ここに決めますっ!!!」
「ほっ、本当ですかっ!?それは良かったです~っ!!では、手続き等をご説明させていただきますっ!!」
よっしゃっ!!と夏呼は横でこっそりガッツポーズをしていた。
仕事の関係上、所々に出張が多い夏呼は、駅近マンションを狙っていたのだ。
しかし、自分には貯蓄が足りないし、将来専業主婦を目指す自分がローンを組むという発想はなかったからだ。
姉は自立して生きていく覚悟だし、もしかしたら...?と思っていた的が当たったのだ。
「やったね!お姉ちゃんっ☆」
「うんっ♪あとは...お金の段取りとか引っ越し作業とか、考えていかないと...ブツブツ」
ということで、三十路手前で高級マンションを手に入れた春呼であった。
ローンも組んだことだし、格差婚などという自分が何の得にもならないようなことはせず、自分一人で自立して生きていく覚悟をした。
これから、ここでどんな風に自分の人生が動いていくのかも知らずに。
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