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出会い
「ちょっと、ちょっと、あなた」
春呼は、その男性職員に近づいていった。
「...はい?私ですか?」
掃除中の男性は、振り返った。
前髪とメガネで顔が隠れがちで、あまりはっきりと顔立ちが見えない。
だが、他のメンズほどキラキラ~ッ感は放っていないし、あのいかにもな営業スマイルはない。
逆に話しやすいし、何かあればこの子に相談しようかなと春呼は思った。
「えっとぉ...あなた...生田(いくた)さん?
生田 要(いくた かなめ)くんね!おけ!わかった!」
職員の名札をみて確認した。
「何か御用でしょうか?」
「いや、今は何もないの!何かあったときは、よろしくね!」
「は、はぁ...承知いたしました。」
男性は不思議そうにしながら、渋々返事を返した。
やったね!これで、変にトキメキスイッチを押されずに済むわ♪と安心する春呼だった。
「でも、あんな感じの子も職員に混じってたのねぇ~、よくわからないわ、この管理会社(笑)」
といつもの独り言を言いながら、エレベーターを待っていた。
すると、説明会の時、一緒だったゴスロリ女子が現れた。
「こんにちは~!」
「こんにちは~、こないだはお疲れ様でした。」
「ほんとですよねぇ、あんなに一度に色々と言われても覚えきれないっ(笑)」
「ですよねぇ~(笑)」
ほのぼのとする会話だった。
「何階ですか?」
「10階です!」
「えぇっ!?私と一緒です!」
「そうなんですねっ!!やったぁ~お姉さんと一緒で嬉しいです~!!」
「いえいえっ!こちらこそ!
改めて、よろしくお願いしますね~!!」
倉科さんだっけ...?
感じのいい子だし、仲良くできたらいいなぁ~と思いながら、ガチャっと自分の玄関のドアを開けた。
まだまだ片付いていない。
引っ越ししてすぐだからよっと、春呼は開き直っている様子だ。
カチッと、
ライトの明かりをつけたが、つかない。
カチカチカチッと何度もカチカチしたが、
一向につかない。
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