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第1話
〈おまえをころす〉
と、書いてあるのだろうか。
震えた文字で、そう書いてあるようにも見える紙きれが、ベッドの下に落ちていた。
私を殺そうとしているやつがいるのだろうか。
「いったい、だれが……」
見当もつかない。どうせ、だれかのいたずらだろう。
実際そう書かれているのかどうかも、はっきりとはわからない。
そもそも、こんなへたくそな文字を書くようなやつが、私を殺せるはずがない。
私は、そのいまいましいメモをにぎりつぶし、ごみ箱へ放りなげた。
そして、ぼんやりとベッドにすわりこんだ。
頭の中に霧がかかってくるようだった。その霧はだんだんと濃くなって、私はつぶやいた。
「ところで、私はだれなのだろう。だれだったのだろう……」
そこで、はっとわれに返った。
いかんいかん、ぼんやりしていた。私は私だ。最近、なんだか記憶があいまいな気がする。少し疲れているんだ。
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