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第4話
気味の悪いベトつきをふきとりながら、あたりをみまわして気づく。
「ここは……私の家じゃない」
ここはどこなんだ。私はどこにいるんだ?
枕の脇にボタンのようなものがある。
ナースコールだ。
ここは病院だ。私は入院している。
だから友人は、私の体調をきづかっていたのか。
しかし、どこか体に悪いところがあるようには思えない。おかしいとしたら、この記憶があいまいなこと、頭がぼんやりすることだけだ。記憶喪失にでもなったのだろうか。
なにか手がかりはないかと、部屋をみまわす。
ベッド脇のデスクに写真がかざってある。私と一緒に中年の女性と若者が写っている。
「そうだ、私の妻と息子だ」
家族のことさえ、忘れていたとは、私はだいぶ重症らしい。
写真をよくみると、うしろに高級車がうつっている。だれもがうらやむ車。えらばれた者がのる車。
「この車は……」
思い出した。
私の自慢の車だ。
あのとき、私はこの車を運転していたのだ──。
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