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第36話 引き続き、買い出しタイムへ
楽しいお寿司の時間をおえ、莉子とエルフ4人は再び移動を始める。
しかしながら、莉子はまわりの視線が気になるようだ。
特に女性からの視線が、痛い!
「何でこんなに見られるんですかね……」
「それは簡単だ。リコが美しいからだ」
莉子が頬を撫でるイウォールの手を払うと、ケレヴが振り返った。
「ここの女は金持ちばっかで、エルフを飼うのが趣味なんだよ」
「飼う……?」
「エルフはブランドバックと一緒なんですよ」
アキラが肩をすくめて言うが、時代はそんなことになっていたとは……。
莉子の知らない世界がここにはまだまだあると思い知らされる。
たくさんの人に会って、話をしているつもりだった莉子だが、井の中の蛙であることを改めて理解した。
「だからリコ、私の腕をつかんでかまわない。そうすれば、リコを守れる」
「守るって、どう言う意味ですか?」
ウキウキで腕をからめてくるイウォールを押しのけながら尋ねると、トゥーマが笑う。
「そのまま。人間慣れしてるエルフは珍しいから、リコを蹴落として、エルフを手に入れようって魂胆。巷じゃ、エルフと付き合うと若返るとか噂があったりさ。とにかくエルフは重宝されてんの」
「なななんですか、それ」
「だから、リコ、大人しくイウォールの腕つかんどけ。ある程度俺も虫は避けてやるが、人間は貪欲だからなぁ……」
「魔法使えるように法律変えた方がいいと、私、思います。と言うか、そんなに危険な場所なら、別なところにいきましょうよ」
莉子が4人へ懇願するように言うが、みんなは首を小さく傾げている。
「ここじゃないといいのないし、オレたちがリコを守ればそれでいいじゃん」
「なんでそんなにトゥーマさんはあっけらかんってしてるんですか」
「こういうのはトゥーマに任せてください」
アキラは優しく微笑み、トゥーマの横へ。
すると、数人の若い女性がトゥーマにかけよっていった。
何事かと見つめる莉子に、トゥーマはツーショット写真を撮り、さらには雑誌にサインを入れている。
アキラはその女性とトゥーマのフォローをしていて、なんてファンサービス旺盛な人たちなのでしょう。
……が、意味がわからない!
無理やり腕を組まされたイウォールに、莉子は尋ねた。
「トゥーマさんって、……モデルさん、なんですか?」
「リコ、聞いてなかったか? あれでもうちの会社の社長だ。よく雑誌に取り上げられてる。私はそうは思わないが、トゥーマは美しい青年社長なんだそうだ」
「え、なにそれ聞いてないです。雑誌も見てるようで見てないから……はぁ……すみません、世間知らずすぎました……」
がっくりと項垂れた莉子の頭をイウォールが優しく撫でた。
「そんなに落ち込まないで、リコ。私たちは普通に接してくれるリコがいいんだ。エルフでも特別じゃないっていうのが、いいんだ」
あまりに優しく微笑まれるので、莉子は手を退かせられない。
瞬間、人がぶつかった。
とっさに莉子は謝るが、相手は逃げるように去っていく。
それで思わず莉子は振り返った。
高いヒールを履きこなす清楚なマダムだ。
はみ出るような歩き方はしていなかったはずだが、ぶつかったのは申し訳ない。
「……なんだろ、びっくりした」
前を見ると、スムージーがべっとりと服に……
「ついてない! なにこれ?」
イウォールが人差し指でくるりと円を描くと、少し離れた街路樹にびちゃりと流れていく。
「ね、リコ。危ないだろ? 私にしっかりくっついて歩いているといい」
振り返ったケレヴはニコニコと笑うだけだ。
改めて、とんでもない人たちといっしょにいるんだと、莉子は覚悟を決めた。
「あ、リコ、ここのセレクトいいんだよ。ここでカップ買おうぜ!」
トゥーマの声についていくと、そこは裏路地にある、小さなセレクトショップにたどり着いた。
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