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第4話 カフェの危機
エルフのお姉さんが莉子に手を振り、会社へ向かっていく。
この姿もあと何回見られるのだろう──
「どうしたの、莉子ちゃん、溜息なんかついて」
靖也はカウンターで本を読みながら、莉子の溜息に顔をあげた。
1度目は気のせいかと思ったが、3度目となれば深刻だ。
カウンター越しの莉子は小さく苦笑いを浮かべているが、それだけである。
「俺にも言えないのかい?」
「……もう少しまとまったら話します」
このところ、莉子のテンションは低かった。
なぜなら、人生の岐路に立たされていたからだ。
高校卒業と同時にこの店を継いで、1人で踏ん張ってきた。
苦労も、人並みより多かったのではと思う。
ようやく、そう、ようやく軌道に乗ったといっていい。
祖父や両親に恥じない店に近づいてきた矢先だ。
カウンターの下に置いて眺める用紙に書かれているのは、『立退き』の文字───
そう、このカフェの敷地が、エルフ企業・ラハ製薬によって買い取られてしまったのだ……!
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