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第43話 朝食会
1時間ごとに降りてくるエルフたち。
この厨房が集合場所になるのもあって、どんどん厨房が狭くなっていく。
というのも、二世帯の分岐点が、この厨房なのだ。
厨房左右にある階段が、二世帯を分け、繋げているのだ。
そのため、莉子が子供の頃は、朝食は厨房だったし、夕食もこの厨房だった。
莉子が独りになってからは、どこということもなく始まり、終わっていたが、エルフがきたことで、またこの厨房が始まりの場所になっている──
それに微笑ましく思えたのは、二人まで。
イウォールとアキラが厨房で談笑しながら手伝いを始めたところで、ケレヴの登場に、ぐっと厨房が縮んだ。
「……でかい人たちが並ぶと、狭いんですね、ここ。はい、ケレヴさん、コーヒーあげるんで、店内に移動してください」
「じゃ、僕はテーブルの準備しておきますね」
「じゃ、俺は新聞でも読んでるわ」
「ケレヴも動いてくださいよ。体、大きいんですから」
アキラにせっつかれながら出ていく姿が、兄弟のよう。
イウォールはスープ作りをしてくれており、火を止めたことから、準備は万端。
「最後はトゥーマか……」
呆れた声でイウォールが呟いたとき、リズミカルに階段を降りる音がする。
「まじダリィ……」
現れたトゥーマに莉子は悲鳴をあげた。
なぜなら……
「トゥーマさん、服着て、服っ!!」
シャワーを上がってすぐに降りてきたのか、濡れた頭に半裸、下はかろうじて履いているものの、綺麗な方の上半身は、莉子に刺激が強すぎる!
素早い動きでイウォールの後ろに隠れるが、莉子の心臓のドキドキはおさまらない。
「び、びっくりした……」
「リコ、あの程度で驚かれては困る。トゥーマは基本裸族だ」
「……ん?」
「裸族」
「ん?」
「リコは知らないのか? 私はこの世界で知ったのだが、部屋に入ると服を脱ぐ者のことを指すと聞いたが……」
「……やっぱり、その裸族なんだ……」
「この前のときはそれは凄かった。かは」
「やめて! なんか妄想が穢れる!」
「妄想が、穢れる……?」
改めて服を着たトゥーマにコーヒーを渡し、朝食の準備を整える。
眠たそうな顔のみんなを前に、イウォールが宣言をした。
「今日は、エルフに優しい店内に模様替えだ。よろしく頼む。では、いただこうか」
今日の1日も長そうだ。
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