第51話 開戦!

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第51話 開戦!

 水曜日となり、いつもどおりに莉子は朝を始めた。  それしかない。  変わらない日々を送ることが大切なのだと、よく、彼女の祖父は言っていた。 「リコ、体調はどうだい?」  朝の挨拶もしないうちに心配をしてくるのは、イウォールだ。 「だから大丈夫ですってば……昨日は至れり尽くせりでしたし……」 「いやいや、添い寝もできていないんだから、至れり尽くせりとは」 「添い寝はけっこう!」  コーヒーを飲みつつ、今日のお昼の準備をしていくが、今日は暑さが厳しい予報なので、トマトの冷製パスタにしてある。  トマトの下準備を任せ、莉子は店内の清掃と、準備だ。 「今日はどれぐらいになるかなぁ……暑いから少ないかな……」  メニュー看板を書きかえ、外に置く。  これがオープンの合図だ。  さっそくモーニングタイムに、靖さんの登場だ。 「今日はパスタランチにしようかなぁ」  そう言いつつ、カウンターに腰をかけると、本を開くが、今日は一番最初のページだ。 「靖さん、この前の本、誰が犯人だったんです?」 「あれね、主人公だったんだよ! 初めて当たったよぉ! いやぁ、爽快だったねぇ!」 「おめでとう! なんか嬉しいから、食後にケーキ御馳走するね」 「いいのかい? ケーキなんて久しぶりだなぁ。果物がたくさんのってるのがいいな」 「あー、フルーツタルトね。今日のタルトはベリーたっぷりだから、靖さんも気に」  ここで声が途切れたのは意味がある。 「おはよう、リコー!」  エリシャが抱きついてきたのだ。 「昨日会えなくて本当に寂しかったぁ……あ、聞いて、あのね」 「エリシャさん、近いし、抱きつかないで欲しいし、お客さんなんだから席についてください」  莉子の声には従順なのか、すぐに靖の隣のカウンターに腰を下ろすと、 「モーニング クダサイ」  いつもの片言の日本語で注文だ。  それがなぜか可愛らしくて、莉子は思わず笑ってしまう。 「なによ、リコ。私の日本語、おかしい?」 「違いますよ。うーん……かわいい、って気持ちですね」 「ほんと? 私、かわいいなんて言われないから嬉しいっ」  2人分のコーヒーを入れていると、厨房からイウォールが顔を出した。 「リコ、トマトの湯むきと下処理、マリネにもしたから問題ない。サラダの準備も終えて、あとは……あ、エリシャ!」 「あーら、イウォール、裏方がお似合いですこと」 「うるさい! 私はリコの完璧なパートナーだからな。お前は、この場所には入れんだろうっ!」  ぐぬぬっ! と聞こえてきそうなエリシャの顔だが、確かにには入れない。  それは店員とお客の境界線、カウンターの外側と内側だからだ。 「はいはい、うるさいですよぉ……。靖さん、ごめんね、朝から騒々しくて」 「いやいや、こういうのも、たまには、いいよ、たまには」  強調されてる………!  この空気を読み取ったイウォールとエリシャは少し小声で話し出す。 「イウォール、これは私からの挑戦状よ。あなたはこれを受ける義務があるし、そして、負ける未来しかない……」 「どんなものだ? 私が負ける戦は、ありえない」 「それは、『エルフを今週日曜日までにどれだけ呼び込めるか』……さぁ、勝負よ、イウォール!」  そんな勝負だと!? と言わんばかりの顔つきだが、莉子がぼそりと、 「それ、どうやってお客さん見分けるんです?」  再び衝撃の顔つき!!!! 「……じゃあ、私とイウォールでそれぞれに宣伝を打ちましょう。打ち方はなんでもいいわ。SNSでもなんでも。開始する時間を決めた方がいいわね……そうね、18時以降とかどうかしら。で、宣伝のマークを見せないと入れない仕組みにするの。今日から金曜日まで宣伝。土曜日と日曜日限定。エルフだけの日があるのも面白いと思わない?」  莉子はエリシャの話を聞きながら、想像を膨らませていく。 「……いいかもしれませんね。確かに、エルフさんが来てくれないと意味がないですし……」 「なら、決まりね!」  そうしてまず始まったのが、どう宣伝するか、だ。  エリシャはすでに算段は整っているようで、鼻歌まじりにコーヒーをすすっている。  イウォールはというと、さっそく呼び出したのは、トゥーマとアキラだ。
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