82人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
第52話 作戦会議
飛び込むように店へ来たトゥーマとアキラだが、エリシャは入れ替わりで出ていく。
ドアから溢れる逆光を背に、
「……この勝負、私の勝ちね……」
颯爽と出勤していった。
莉子はとりあえず問題児がいなくなったことに安心するが、今度はエルフ3人が騒がしい。
「トゥーマ、アキラ、どうだろう。戦略はあるか」
「うーん、オレのフォロワー、エルフ少ないんだよなぁ」
「僕もなんですよぉ」
「エルフの方のフォロワーが少ないって、かなり、ヤバくないです?」
莉子の「ヤバい」の声に、靖がページをめくりながら、顔を上げた。
「莉子ちゃん、この世界にいるエルフなんて、少ないに決まってるんじゃないのか?」
その通りだ! そう言わんばかりの表情で莉子は目を開くと、
「エルフさんの絶対数が少ないんじゃないかって、靖さんが」
「「たしかに!!!!」」
「じゃ、オレ、さっそく告知するわ。マークなんにする?」
「そうだな……」
イウォールが人差し指を立てると、青い文様が浮かび上がる。
エキゾチックな文様だが、細い炎で描かれているようで、ゆらゆらとそよぐ姿が美しい。
「あ、それ、アール! なるほど、いいですね!」
2人はさっそくとそれを写メに撮り、準備を整え出す。
莉子は何がアールなのかわからず、まじまじと顔を寄せると、イウォールが笑う。
「魔術の文字に、同じ読みのアールという字があるんだ。これがそう。向こうの世界では、こういう文字をいくつも重ねて魔術はできている」
新たな一面を知りつつ、まさか店名と同じ読み方の文字が異世界にもあるとは、興味深い。
「いつか行って見たいです、異世界」
莉子が文字を見つつ、こぼす。
その視線をすくいあげるように、イウォールは莉子と目を合わせると、そっと髪をすいた。
「……それもリコの願いなら、叶えるよ。私が」
思わず聞き惚れてしまった莉子の背を、靖の声が叩く。
「莉子ちゃん、ランチお願いしていいかな?」
「……あ、はい。今日はパスタですもんね」
靖は再び本に目を戻しながら、
「……莉子ちゃんにも春がきてるねぇ……」
氷の溶けた水をおいしそうに飲み込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!