つつがなく自己紹介は進んでいく

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つつがなく自己紹介は進んでいく

簡素な自己紹介を終え、指定された席へと座る。 「俺、平川潤(ひらかわじゅん)。よろしくな」 唐突に俺の横の席に座っていた男子が手を差し伸べてきた。 いや、なんだこのイケメン。 金に近い茶髪で、俳優かアイドル並みのイケメンが俺の隣にいた。見た目からコミュ力の高さをかんじる。見たところ背も高そうだ。 「お、おう。よろしく」 俺は反射的にその手を握った。 「よろしく!」 そういってまた満遍の笑みでよろしくしてきた。 こういうやつが女の子にモテるんだろうなー。 まぁ関わりを持つなんてないだろうし記憶の片隅にでも置いておけば良いだろう。 再び教卓へと意識を向けると、先生が黒板に大きく自分の名前を書いていた。 「今日からこのクラスを受け持つことになった赤崎千夏だ。よろしく」 先生はそう言って教卓の両端に手を置きながら自己紹介をした。 「なぁ、赤崎先生って」 「あぁ、課題の鬼だよな」 他の生徒たちの会話がちらほら聞こえてくる。 なんだ課題の鬼って。 「今日から君たちはクラスメイトだ。それぞれ自己紹介をしておいた方が今後も上手くやりやすいだろう。生憎、まだ始業式までは時間があるからな」 そういって廊下側の1番前に座る生徒から自己紹介が始まった。 あれ?俺だけ先に挨拶する必要あった? つつがなく自己紹介は進んでいき、ある女子生徒の番が回ってきた。 「新川唯(あらかわゆい)です。去年はB組でした。皆んなよろしく!」 彼女は屈託のない笑顔で自己紹介をした。茶髪でポニーテール。身長は160センチ程だろうか。いかにも美少女であった。 その彼女がこちらを一瞥したように見えたのは恐らく気のせいだろう。 「うひょー。新川さんじゃん」 「やっぱ可愛いよなー」 「このクラスで良かったぜ」 周りから聞こえてくる声から察するに、彼女は男子から相当人気なのだろう。確かにこれだけ可愛いのだ。人気がない方がおかしい。 けれど俺は、その笑顔に何故か懐かしさを覚えていた。 ◇◇◇ その後も自己紹介はスムーズに進んでいった。何かあったとすれば、平川の自己紹介の時に新川と同じように今度は女子が色めき出したことぐらいだろう。 さすがイケメン。略してさすイケ。 そんなこんなで自己紹介も終わり、その後始業式に向かうこととなった。 ぞろぞろと廊下に出て体育館へ向かっていく。廊下で歩いていると、目の前で数人の女子生徒と談笑しながら歩く新川の姿が目に入った。 女子生徒からも人気なのか。 などと考えていると、新川がこちらを振り向き、がっつり目があった。 そして、勢いよく顔を背けられた。 あれー。俺なんかしたっけ。顔気持ち悪かったかなー? 俺が自虐に走っていると、女子生徒に囲まれていたはずの平川がいつの間にか隣にいた。 「なぁ、新川さんとなんかあったのか?」 目敏いやつだ。けれど俺にはなんの身に覚えもない。 「いや、なにも」 そうぶっきらぼうに返すと、平川は何かを察したかのように「ふーん」と返すと、 「向こうは何かあるように見えるけどね」 チラチラとこちらの様子を伺ってくるような素振りを見せる新川を見てそういった。
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