たとえ星が降らなくても

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*** 制限時間いっぱいまで料理を楽しんでから店を出た。ホテルのロビーを通って駅に向かう出口へと向かう。 「はぁ、お腹いっぱい……」 片手をポケットにつっこんで歩く俺の隣で、奈菜がため息をつきながらそう言った。 「食い過ぎだろ」 「だって、すっごく美味しかったんだもん」 「それにしても、最後のプリンが余計だったんじゃないのか?」 「プリンじゃなくて、“クレマ カタラーナ” !スペインのクリームブリュレだよ」 「どう違うのか全然わっかんねぇ……」 「もう……」 呆れたように肩を下げた奈菜が、ふっと顔を窓の方へ向ける。 ロビーの外に面した全面ガラスを、ぽつぽつと雨粒が叩いている。さっきよりは雨脚が弱まっているけれど、まだ止みそうにはない。 彼女がふぅっと小さくため息をつくのを、俺は聞き逃さなかった。 「まだヤサグレてんのか?雨が降ってもビアガーデンは満喫しただろ?」 「別に、……ビアガーデンは満足したよ」 「そうか?」 「そう。……ただ、今日はせっかくの、」 「七夕な、」 「『七夕なのに』、だろ?」 「え!?」
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