3話

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3話

 死んだら何処へ行くのだろう。  幽霊は本当に実在するのだろうか。  死ぬ時はどんな感じなんだろうか。  そんな気持ちを抱えながら日々を過ごしていた僕はある日、限界がきた。  夜、ベッドに横になってもなかなか眠れず、寝返りを打ってはいつものように『死』について考える。自分が老衰で亡くなることを、寿命が残りわずかになった自分を想像する。  無機物となったじいちゃんと死んだ自分を重ね、その時が刻々一刻と近づいて来ている事実が僕の心臓を抉ってきた。  無意識に一定のリズムで呼吸していた息がひゅっと止まり、そわそわと落ち着かない体をがばりと起こして、股の間に被せられた布団を凝視する。それすらも落ち着かず、這い回る目玉。目頭が熱くなった。  死への恐怖。  布団を勢い良く剥いでベッドから起き上がると円を絵描くように部屋の中を歩いた末、床にしゃがみ込む。自分で自分を抱きしめるように二の腕あたりを力一杯さすった。 「嫌だ嫌だ嫌だ……死にたくない」  確認のためなのか、落ち着かせるためなのかわからない。そんなことをなんどもなんども呟いた。今すぐにでも部屋から飛び出して母に抱きしめてもらいたくなった。  嫌だ。死にたくない。死んだ先を考えた途端、感情や思考が途切れるあの恐怖。一寸先の闇の恐怖が焦りになって心中から溢れ出してくる。  涙がでた。体育座りになって膝を抱えて声を押し殺して泣きじゃくった。  誰でもいいから優しい人に、家族でも恋人なんてものがいたのなら聖女のように今すぐ抱きしめて欲しくてたまらなかった。  『死』への恐怖はしばらくすると引き潮のように落ち着いていった。  それ以来、幾度かこのような『死』の恐怖に苛まれることになったが、いつもどうやってそこから眠りに落ちていったか記憶にない。  今となっては、この『死』への恐怖こそがあの少女と出会うきっかけだったのだろうと僕は思う。  初めて『死』への恐怖を味わったこの日、僕は不思議な夢を見た。    
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