吟遊詩人

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ひとつの国が呆気なく滅びた。 小さな国。大国にはとうてい勝てない。 「とうとう滅びたらしいが王子が行方知れずらしいぞ」 「公国の宝石と称された二十もそこそこの綺麗な顔した王子だったらしいな」 「男色の気はねえが一度ツラを拝んで見たかっ……ん?いま通ってった男も中々のツラだったな」 もう噂になっている。 でもオレには関係ない。 ただの旅人としてこの時代を生きていくだけ。 竪琴と剣と空に太陽と月があればいい。 ああ、今夜も星が美しい。星影がきらきらと四方から地上を照らす。こんな四面楚歌なら歓迎だ。 広野で竪琴を奏で切なく美しい星の神話を歌う。 流れ落ちる星がオレの生き様にはもっとも相応しい。 さてとひとりの吟遊詩人の半生と未来を竪琴の調べに乗せて歌ってみるか。 どうせなら盗賊を倒し美女と一夜を共にする勧善懲悪がいい。 悪い王様と妃から金品を貢がせるのもありかもな。 初めての観客は、夜空のお星さま。 金貨は降らぬが星は降る。数だけは勝っているな……ふっ。 ん?久しぶりに笑ったな。苦笑だがオレにも笑顔は残されてるらしい。 「さて、皆様お聞きあれ!とある小国の王子は王や王妃に騙されて城を追い出されたのです。けれどそれは王子を逃がすための策略。こうして王子は旅を始めたのでありました」 Fin. Thank You!
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