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綾香ちゃんと知り合ったのは、偶然だ。
田舎から越してきて半年位経った頃、手持ちの洋服が入らなくなった。
親に言ったら痩せろだの、原因を追及されるのも嫌なので、自分で作った。
元から手先は器用だし、材料は家に山程転がっている。
自作の洋服を着て、住宅街を歩いていたら 突然声を掛けられた。
「それ、ヴィンテージでしょ?」
最初何を言われてるのか、分からなかった。
彼女の目線で服の生地の事だと理解して、
「…ああ、そうなんですか?気に入ったから使ったんけど」
家の納戸に山と積まれた生地や服飾材料。
「超レア物よ。もう製造してないからm高値でも買う人いるわよ」
服飾…親が私より夢中になっているモノに、愛着はなかった。
そこに有ったから使っただけ。
「あ、私、この先の家の者で怪しい者じゃないから。
手芸が好きでハンドメイド販売にドハマリ中だから、ついね」
そう言って名乗る彼女を改めて見ると、手足がほっそりと長い可憐な美少女だった。
それが関口綾香ちゃん。
可憐なのは外見だけで、中身は毒舌、腹黒策士だと後の付き合いで分かる。
年下だが一人っ子の私には、何とも頼もしい話し相手。
現在は作家活動をしている。
「布も素敵だけど、服のデザインも貴女に似合ってる!何処で買ったの?」
彼女も私の全身を眺めてる。
「自分で作りました」
母の作業部屋には、型紙とか転がってる。
その中から、私を引き立てる様なのを選んだ。体型を隠すのではなく。
パターンは、少し直した。
母が作るのは普通のサイズ。
(しかし普通って何!?言いたい事は一杯ある)
認めたくないが、蛙の子は蛙。
パターンを変更しながら、出来上がり像を想像出来てしまった。才能?センス?
田舎の母の部屋にもファッション雑誌は一杯あった。この家にも溢れてる。
嫌いだけど必要な物、衣服。
人は裸で外を歩く訳にはいかない。
綾香ちゃんはマジマジと私の顔を見て
「才能あるんじゃない?」
いきなり初対面の人に、自作の服を誉められ、才能言われてもドン引きだ。
第一もとのデザインは母のだ。
「私、急ぐんで」
そそくさと離れる。
「又ね!」
気軽に再会を匂わす彼女。
少し歩いてから、門扉を開ける音で振り返る。
「あっ!あの家の…」
確かに近所。
彼女が入って行ったのは、私と陸の家を合わせたより大きい敷地の家だった。
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