38人が本棚に入れています
本棚に追加
私の上司、風間龍一はユニセックスな人だ。
年は母より5歳位下だが、美しい。
束ねた髪は白髪混じりだが、全身シャープで無駄がない。
美しいモノを愛する変わり者。
衣装部は、撮影に使う全ての服飾を用意する。それがドラマであれ、報道であれ。
自前の衣装で出る様なら、出演者同士の配色が被らない様にするとか。
外部からレンタルするモノもあれば、衣装部が制作したり管理してる物もある。
私は、服飾管理課に所属する。
常日頃は傷まない様保管し、使って返却された物はクリーニングし、破損があればメンテナンスする。
何千着もある服は、それだけでも骨が折れる。
「時代考証の先生から、指示入ったわ」
「うわっ。あの先生細かいですね」
同僚が渡されたリストを見て、タメ息をつく。
金曜日も確か、こんな感じで始まった。
「優花をアテにしてるのよ、あの先生。探すの手伝ってやって。今日は復元ないでしょ?」
「…はい」
復元。私の担当は、衣装部が保有する古今東西の服飾に使われてる布、革、毛、金銀糸等何でも直す事だ。
更に、卒論は服飾史がテーマだったので、時代に応じた衣服の特徴、服装が表す身分や正装か否か等が分かる。
時代考証の先生にも一目置かれてる。
やはり会社でも、同じ…日にちがリバースしている。
作業台付近にある日めくりカレンダーが金曜日だ。
念のため風間課長に
「すみません、つかぬことをお聞きしますが、今日は金曜日ですか?」
凄く残念な人を見る様に私を見て
「そうよ。貴女、頭大丈夫?浮かれてお花畑にいる?」
綾香さんといい陸といい、私に優しい人は、私に毒舌だ。
「いえ。…始めよう、リスト見せて」
同僚と一緒にキャスター付きハンガーラックを押しながら、保管庫に向かう。
最初のコメントを投稿しよう!