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疲れた…。
挙式翌日の月曜は1日休んで、火曜~通常勤務のつもりが、結婚式(日曜)→婚姻届け出(土曜)→出勤(金曜)と遡っている。
もしこの悪夢が覚めず、明日が木曜日なら月曜日まで地獄の様な忙しさが続く事になる。
挙式の為にかなり仕事を詰め込んだ1週間だったからだ。
夢じゃなければ、陸が言いそうなパラレルワールドというやつか…
陸はオカルト好きなまま、今ではITセキュリティー会社に勤めてる。ハッキング技術?が認められたのか、何にせよ堅気の人間になって良かった。
お互いあのまま引きこもってたら、今は無い。
あーでも、このまま時間が経過すれば、あの暗黒時代に戻るのか…
とにかく疲れた。
会社の通用門を出た時はヘトヘトだった。
ポケットから着信音がする。表示を見れば拓真からだ。
「ん?何」
このまま家に帰りたい。足は自然と自宅方面の駅に向く。
「今夜うちに来る約束忘れた?」
「あっ!」
明日、土曜日2人で役所に婚姻届出す為に、お泊まりの約束だったのだ。
…しかし寝たら木曜日に逆戻りだとしたら、行く意味あるのか?
無言で考えてると、
「酷い~優ちゃん。今すぐ会いたい!会いたい!」
やけに近くで声が聞こえるなと思い振り向くと、通用門から走って来る拓真がいた。
顔の横でスマホを振り振り笑ってる。
立ち止まってる私に駆け寄って来て、勢い良く、ばふんっと抱きついた。
愛情表現がオープンな彼。
お茶の間の皆さんに愛される前も今も変わりない。
この安心感をくれる彼に全部話したい。
私も思わず抱き返した。普段なら街中でこんな事はしない私に
「おっ!優花も会いたかった?」
嬉しそうに抱く彼の腕に力が入る。
彼が今程引っ張りだこになる前は、良く社内でも社外でも会えた。
近頃では意識して時間を作っても、ドタキャンになる事が多くなった。
だから結婚を決めた。
「飯はどうする?」
頭一つ分の身長差があるので、良く拓真はハグしながら私の頭に自分の頬をスリスリする。
頬を離しながら、私の目を見てくる。
キラキラした瞳を向けてくる彼に、こんな自分でも信じられない話はしたくない。
「そうだな~ラーメン食べたい!」
「ラーメン、良いね~」
「拓真んちの近くのあのラーメン屋、メチャクチャ美味しいよね」
「美味しいけど、結婚したらいつでも食べれるよ。他の店行く?」
そう言って携帯を操作する彼の手首を取り、
「あそこが良い」
と手を絡めた。
恋人つなぎする私の手の甲を口元に持っていき、チュッと口づけをし
「珍しく積極的な優花だな~ヨシ!早く食べてイイ事しよ」
そんな風に熱っぽく見られたら、夜の北風も暖かい。
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