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あたしの家(一)
あたしは父さんが苦手だ。なんか、ちょっと怖いから。それにはちょっとした訳がある。別に、たいしたことじゃないんだけど。
幼い頃はちゃんと両親がそろってた。優しくてあったかい家庭の中で、一人っ子だったから、それはもう愛情をたくさんもらってたと思う。
だけどふとしたことがきっかけで、母さんと父さんは離婚した。あっという間のことだった。母さんは外に別の家庭を作って出ていった。
あたしと父さんは家に残って、ただ泣いて去っていく母さんをみてたっけな。母さんはあたしに、ごめん、って一言だけ残したの。あまりに辛そうだったから、頭撫でたことだけは覚えてる。幼いながらに帰ってこないことはわかったからかな。母さんはもう顔がぐちゃぐちゃになってまで泣いてた。悔しそうだった。
父さんはといえば、母さんをじいっと見つめて涙を堪えている様子だった。でも行かないでくれ、とは言わなかった。これから先一緒にいられる未来が見えなかったのかな。
あの日からなんとなく父さんと距離ができた気がする。物心ついた頃には、朝早く家を出ちゃう父さんを窓から見送って、一人で朝ごはんを食べ、学校に行く。母さんが出ていく一週間前に作ってくれた、家事のやり方なんかを書いたノート見ながら、黙々と父さんがやらない代わりにやってきた。料理はできなかったけど。
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