星降る夜に

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 オフィスには自分の指が鳴らすキーボードの音が永遠と続いていた。  二十三組のデスクが並べられた室内にいるのは、私一人だけ。各机の上のパソコン、資料が納められたスチールキャビネット。白い壁と白い天井灯が、その無機質を一層際立たせている。  数時間前から何一つ変化を見せない光景。  まるで時間が制止しているようであるが、壁に吊るされている丸時計の針は淡々と動き続け、ディスプレイに映る資料は着実に完成へ近付いている。  逆を言えば、動いているものはそれだけだった。  私と時計。目の前には退屈と仕事の他に何もない。  普段より格段に作業が捗ったのはそのせいだろう。あと一時間もあれば資料も完成されられると思われたが、時計の針は間も無く十九時を指そうとしていた。  資料作成の期日にはまだ余裕がある。私は不要な残業は避けろという社の方針には従う事に決めた。  区切りのいいところでパソコンを落とし、疲弊した目を指でほぐしながら、時計の秒針が頂点へ達するのを待って立ち上がる。  椅子背に掛けていたジャケットへ腕を通すと、念入りに戸締まりや電気の消し忘れがないかを確認して、オフィスを後にする。  暗闇の中へ出ると、天井灯が廊下を照らし出した。等間隔に扉を並らべた狭く長い廊下。白いエナメルの床の上に白熱灯が縞をつくっている。  
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