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突然空腹を感じ始めたのは、それが理由かもしれない。
アーケードを抜け再び街路へ出た私は、その先に見えるコンビニへ向かった。
ガラスの割られた自動ドアは意味を成していない。店の前に立つと、空っぽになったその枠組みだけが左右に動いた。
革靴でガラスを踏みしめながら、中へ入る。左手にレジカウンターが、右手に商品棚が並んでいる。
足元に転がっていたオレンジ色のカゴを手にして、手前から奥へ向かって、棚の間を縫うように進んだ。
棚の商品は、入り口付近に並ぶ雑誌などを除けば、殆ど残されていない。特に飲食物は菓子類を含め根こそぎ持ち出されている。私の欲求を満たす事は難しいように思われた。
それならそれでいいと思った。寧ろ今更になって、こんな欲求を抱く自分の体に、疑問を覚えていたくらいである。
それでも半ば習慣的に店内を彷徨くと、レジ近くの棚の最下段、その奥に隠されるようにして、おにぎりが一つ取り残されているのを見つけた。
私はこの細やかな不幸にため息を漏らし、シーチキンと書かれたおにぎりをカゴへ放り込む。
不自然なもので、以降、取り残されていた飲食物がポツポツと見つかるようになった。一度通り過ぎた棚まで戻ってみると、念入りに確認したにも関わらず、それほど見付けづらくもないところにも、食品が残されていた。
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