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「おい。お前ら」
こちらへ顔を向けた者は、一人としていなかった。
「おい」
近付いて、その中の一人の尻を爪先でつついてみる。しかしつつかれた当人も、その周りにいる同じ顔をした者達も、何も反応を示さない。
どうやらこうした人間達に無視される事は、私にとって耐え難い屈辱であるようだった。
腹を立てた私は、手近にいた男の脇腹を蹴飛ばした。
蹴られた男は「ぐうっ」と声を漏らし、横へ倒れる。
他の浮浪者達は気にする素振りも見せず、ぶつぶつと念仏を唱えるように言葉を紡ぎ、鼻を啜り、嗚咽を漏らしている。
私はまた別の男の肩口を蹴って転がし、倒れたそいつの足や腹を何度も踏みつけた。
するとやがて周りから、クスクスという声が聞こえてくる。
浮浪者達の笑い声だった。私がそのまま無差別の攻撃を加え続けると、聞こえる声も次第に大きくなっていった。
私は足を振り上げ、突きだし、踏みつけた。
そうしている私もどうやら笑っているらしい。頬を綻ばせ「ふふふ」と息を漏らしているらしい。
それに気がついた直後、私の内側は虚空となった。
私は動きを止めた。
茫然と立ち尽くした足下には、同胞達がキュビスム絵画のように横たわっていた。
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