近親相姦もいいとこだ(※閲覧注意)

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 ――どういうことだ。  腹違いとはいえ、彰と匠さんはれっきとした兄弟だ。しかし、実の兄である彰を思いながら、匠さんは自分を慰めている。聞いてはいけないと思うのに、俺はその場に固まったまま動けずにいた。  そしてさらに俺は、彼の声の他に、何やら別の音声が聞こえてくるのに気づいた。耳をそばだてた俺は、今度こそ凍り付いた。 『顔を見ながらしたいな……』 『挿入()れるよ……』 『大好き……』  それは紛れもなく、彰の声だった。  ――どうして、こんな音声が。  部屋は、薄明かりが点いている。ドアの隙間から目を凝らした俺は、匠さんがスマホを握りしめているのに気が付いた。彰の声は、明らかにそこから流れている。俺はぞくりとした。  ――これって……。俺とのエッチの時の声だよな……。盗聴してた……? 匠さんが?  その間も、彰の声は流れている。そこで俺は、ふと違和感を覚えた。エッチの最中、彰は頻繁に俺の名前を呼ぶ。でも、聞こえてくる音声に、俺の名前は一切含まれていない。  ――ご丁寧に、編集したってことか……。ん? 編集?  俺ははっとした。宮川さんたちに送り付けられていた、あの嫌がらせメール。あれには、俺と彰のエッチ中の声が添付されていたではないか。俺の声だけを、切り取るよう編集して。  ――まさか、あのメールの犯人は、匠さん……!?  俺は、反射的に身を翻していた。これ以上聞くのが怖かったのだ。しかし、慌てて部屋に戻ろうとして家具にぶつかった俺は、ガタンと大きな物音を立ててしまった。 「風間さん? 帰ったんですか」  俺がパニックになっている間に、いつの間にか匠さんの行為は終わっていたらしい。部屋の中からは、やけに冷静な声が聞こえてきた。俺は意を決して、彼の部屋のドアを開けた。匠さんは、何事も無かったかの様子で、ベッドの上に座っている。 「俺の生徒に宛てて、俺を中傷するメールを送り付けたのは、匠さんだったんですか」  俺は、彼をキッと睨み付けた。 「何のことですか」  匠は、平然としている。俺はカッとなった。 「とぼけんな! 何なんだよ、この録音!」  俺は匠に飛びかかると、布団を引っぺがした。奴は抵抗したが、力は俺の方が強い。俺は、奴が持っていたスマホを力づくで奪い取った。 「俺と彰のエッチを盗聴してたのかよ、この変態が! 彰が好きなのか? だから、俺の皿をわざと割ったんだろ!」 「何だ、知ってたんですか」  匠は、顔色一つ変えない。その態度に、俺はますますムカついてきた。 「母親が違うとはいえ、彰はあんたの実の兄貴だろ? 近親相姦もいいとこだ!」  すると匠は、目を丸くした。 「あれ、知りませんでした? 僕たちは、血なんか繋がってませんよ。赤の他人です」
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