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世界中の叫びを受け止め続けていたSNSも、サーバーがダウンしたのか新たな情報は入ってこなくなった。外に出なくたって、たくさんの情報を知ることができていたというのに、わたしたちは突然社会から隔絶されてしまったみたいだ。世界は沈黙してしまった。
すぐ隣にいる優だけが存在しているみたいだった。手を握ったら、握り返してくれて、少しだけ安心する。そのとき、窓の外で大きな音がした。手を繋いだまま窓の外を確認したら、二台の車がひしゃげて煙を吐き出していた。
「事故……だよね? 大丈夫かな」
「通報、したほうがいいかな」
「どうだろう。すぐ、救けが来るかも」
わたしたちはぼんやりと車を見つめ続けた。もし今助かっても、どうせ明日死ぬ。ふいに頭を過ったその考えに、身震いした。どうせ死ぬから、見殺しにしてもいいの?
震える手で110番通報をした。けれど、呼び出し音がいつまでも続く。繋がらない。119番にもかけてみるが、やはり繋がらない。
窓を開けてみると、どこかでサイレンの音がする。だけど、いつまでも、いつまで待ってもその二台の車を救けに来る気配はなかった。やがて、炎が上がった。無力なわたしたちにできることはなかった。無言で静かに窓とカーテンを閉め切った。
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