沈黙の日曜日

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沈黙の日曜日

 いつもの土曜日のように振舞おうとして、ふたりでボウリング場に行った。世界はまだ半信半疑で、正常を保とうとしていた。道行く人も皆笑顔で、明日の夜にも終わりが来るなんて、言われなければわからないほどいつも通りだった。人生最後の土曜日にボウリングなんて、お気楽にも程がある。でも、普通にしていなければ、壊れてしまいそうだった。  3ゲームやったボウリングのスコアはいつもと変わらない。1ゲーム目はガーターばかり、2ゲーム目は少し調子が出てきてストライクを出したり、かと思えばガーターを出したり。最終ゲームは腕が疲れてしまって、真っ直ぐ進んだ球は失速し、1、2ピン倒す程度。一方で、優はずっと8ピン以上を倒していた。  様子が変わったのは夕方五時を過ぎた頃。世界が、壊れ始めた。わたしたちはボウリングの後に遅めのお昼ご飯を食べてから家に戻り、ソファーで並んでテレビを見ていた。突然画面が真っ黒になって、何も映らなくなった。次第にどのチャンネルに合わせても、同じような状態になってしまった。  どうやら世界は隕石衝突の知らせを受け入れ始めたようだ。生きていくために仕事をしていたのだ。死ぬとわかって働く必要がない。テレビもネットのニュースも情報を発信することをやめてしまった。
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