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気がつけば部屋の中は真っ暗だった。起きていたのか眠っていたのかもわからない。もしかして、もう死んじゃったのかも。なんて考えてみたりもしたけれど、ずっと繋いだままだった手が、指の先が、痺れた。まだ生きてるんだ。
暗闇の中で、テレビの横に置いていたデジタル時計がぼうっと浮かんで見える。時刻は午前三時を過ぎていた。知らない間に日付が変わっていた。今日の夜には死んでしまうというのに、わたしのお腹は空腹を訴えてきて、人間ってなんだかなあと思った。
優の指をそっと外して、窓のそばに近づいた。さーっと雨の音がする。いつから降り出したのだろう。あの車は夕方に見たままの形を保っていた。雨のおかげで爆発は免れたのかもしれない。無事でいて、最後の時間を大切な人と過ごしてくれていたらいいなと思うのは無責任だろうか。
冷蔵庫を開けて中身を確認する。買い物もしなかったからあまり食材は入っていなかった。残りふたつだった卵と少し萎びたねぎを取り出す。ストッカーにしまっていたツナの缶詰も出した。書いてある通りに開けようとしているのに、どうしてもすぐに開いてくれなくていらいらしちゃう。
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