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幸福な土曜日
それはいつもの土曜日だった。見上げた天井にはカーテンの隙間から差し込んだ陽の光が縞模様を作っている。寝ぼけまなこで伸ばした手の指先に、少し高い体温の肌が触れる。
「あ、起きた?」
「んん、眠たい」
休みの日は普段よりもゆっくりと時間が流れていくような感覚がする。実際はそんなことなくて、お昼ごろに目覚めては後悔することがほとんどなのだけど。目を閉じて返事をしたわたしの鼻と額に口づけを落として、優はベッドから抜け出ていった。温いタオルケットだけが残されて、わたしは必死に睡魔を追い払おうとした。タオルケットを手繰り寄せると、優の使うミントのボディソープの匂いがした。
目蓋が重い。優が朝食の準備をする音が聞こえる。トースターのじじじという音に、ポットでお湯を沸かすごごごという音。それでもわたしはまだ起き上がれない。珈琲とパンが焼けた香ばしい匂いがして、ようやくもぞもぞとベッドを抜け出した。
「わたしも食べたい。珈琲も飲みたい」
「おはよ、そう言うと思って準備してたよ」
「ありがと」
食卓に向かい合って座って、焼きたてのパンにバターを乗せる。優はテレビの電源を入れた。珈琲を一口飲んで、それからパンを齧ったときだった。
『先程発表がありました。地球に巨大な隕石が接近しているようです。明日の夜にも衝突するとのことです』
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