◇002/僕とルカ

1/5
前へ
/272ページ
次へ

◇002/僕とルカ

◇002/僕とルカ ──────────────────── 乾いた風が頬を撫でる。仕事としてこの地に立つのは4年振りくらいだろうか。西方管轄区国境警備隊、今回は彼等との共同作戦となる。今現在立っている地はまさに国境。これから行うのは制圧戦。現場は国境ぎりぎりの廃墟群。 廃れてしまったその地に風が吹く度に砂埃が舞う。疎らに生えた背の低い草も風に煽られそよぐ。こんな仕事でなかったら、この廃墟群も散策するには丁度良いのかもしれない。だがなにぶん今は、広範囲で規制線が張られてしまった。 僕達中央第6小隊は、今回ここで西方管轄区国境警備隊と不法入国のテロリストの制圧を行う。何故わざわざ僕達が?と思うのだが、この第6小隊がある種の特殊部隊の役割を担っているからだろう。 それぞれが自らの装備を確認する。僕も自分のブレードを鞘から引き抜き状態を見る。それからハンドガンも手に取り、マガジンがない状態でロックを外し動きを確認。そのあとにタクティカルベストからマガジンを取り出すとハンドガンに装着した。 自身の首には個人識別票。きちんと付けられている。 最後にグレー迷彩の活動用軍服の胸ポケットに手をやる。ここには特別と位置付ける呪符を仕舞ってある。胸ポケットにはスチールケースがひとつ。それを取り出しケースを開けた。中には3枚の呪符。これらは全て記名呪符だ。僕の弟が僕の為に設えてくれた呪符。僕は未だにこれら3枚を行使出来ずにいるし、これからも行使するつもりもない。毎回戦闘に出る度に、この記名呪符を確認する。これはもう習慣だ。 弟を含め、僕はもう家族と会うつもりはなかった。家を出た当時はそう思っていた。 ─────────────────────── ─────────────────────── 僕の家の話をしよう。 僕の実家はこの軍事国家の中心部、中央管轄区中央都市に居を構えている。父は僕と違って軍人ではなかったが、財政界では名の知れた人だった。 僕はそんな家の長男だから、当然の様に母は僕に過度な期待を掛けた。幼い頃から語学を含め様々な学問を学ばされたし、ピアノやバイオリンや絵画などの芸術にも触れさせられた。剣術も習わされたし、必要程度の狩猟もやらされた。 正直どれもつまらなかった。理解した事は、興味がない事はやはりどうあってもつまらないと言う事だった。ただ母のお陰で様々な知識、経験が身に付いた事は後々役に立ったので良かったのだと思う。その点は感謝をしなくてはならない。 僕は『僕』であるのに、母は『後継ぎの長男』としてしか見てくれない。そのプレッシャーは凄まじく、僕は段々笑わない子供になって行った。 ───────────────────────
/272ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加