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──もしイーヴルが離脱したら6隊はどうなる?
先を見据えてみる。イーヴルの役割として大きいのは後方狙撃。それと黒曜の護衛だ。いくら黒曜が遊撃班から来ているとは言え本業はエンジニアだ。誰かと戦う事には到底向いていないのをアイゼンも知っている。襲撃されたら間違いなく黒曜はやられる。
6隊は指揮官を2人立てている。1人はリアンだ。リアンに関しては元々が前線組なので護衛は要としていないが、大概アオイが傍にいる。アイゼンが参戦していればアイゼンも後方からの護衛が出来る。
もう1人が黒曜だ。黒曜の戦闘力は皆無だ。だからいつもイーヴルを傍に置く。そのイーヴルがいなくなったら黒曜が無防備になってしまう。
「…黒曜…。黒曜にはそれ、言ったのか?」
「1番最初に言った」
アイゼンが思っている以上にイーヴルは冷静なようだ。
「『話は理解した。気持ちも理解した。だが、まだ早まるな』って言われた。黒曜さんは一緒に考えてくれるって」
「…そうか」
重たい話にどう反応すべきか、アイゼンは悩む。イーヴルの気持ちに賛成する事も反対する事も、今は出来そうにない。
「イーヴルは…離脱したいんだな?」
「あぁ。もう人を撃てるとは思えない。もうここで役に立つ事は出来ない」
「…そうか」
置いたグラスを手にすると、注がれたアルコールを流し込む。話の内容な重過ぎて、とても酒の味を楽しむ事など出来なかった。
「イーヴル、俺はお前に何をしてあげられる?」
「俺には何もしなくて良いよ。…でも」
辛い筈のイーヴルが、その見た目通りの笑顔をアイゼンに向けた。
「でも、リアンには何かをしてあげて。本当に辛いのは俺じゃない。リアンだから」
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