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◇006/兄貴分と弟分
◇006/兄貴分と弟分
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──Eisen side──
「…あぁもう、くっそ重てぇ…」
自分の両肩にはリアンの腕。右手でリアンの右腕を肩に掛け、左手でリアンの身体を支える。出来れば自立して欲しいのに、リアンは到底自立しそうにない。
「リアン、おい、もう少ししっかり立てよ」
「…うん…」
「駄目だな、こいつ」
珍しくリアンが酔い潰れた。長く付き合ってはいるが、こんな事は初めてだ。普段はちゃんと自制をして、程々の酔いを楽しむこいつが随分と飲み、そして醜態を俺に晒している。身長181cm、俺より少しだけ背が高いこの男。割りとしっかりと鍛えられた身体。そして酔い潰れ上手く力が入っていない。
──重たくない訳がない!!
珍しく酔っ払った理由。1つは6隊最年少のアオイが20歳になった事。20歳と言うのはひとつの区切り。祝う為に皆で出掛けた。そこではいつも通りの程々な飲み方だったのを覚えている。2つ目はルカが何らかの国家資格を取得したと言っていた。あれこれあったもののやはり唯一の弟。嬉しいには嬉しいらしく、2件目の店でのペースがいつもよりも早かった。
そして今に至る。結局アオイとルカを理由にして、たまには羽目を外したかっただけなのかもしれない。
本当はリアンの自宅に送るべきなのだが、こんな重たいのを抱えて行きたくない。自分の自宅の方が明らかに近いから、今日は自宅にこいつを泊めた方が楽だと判断。ジーンズのベルト通しにカラビナで付けていたキーケースを取り外す。赤い革製のキーケースを開け、ICチップが内蔵されたキーホルダーをマンション入口のリーダーにかざしエントランスを開け、エレベーターに乗り込む。自宅の玄関前で今度はキーホルダーではなくキーを使ってロックを外し、玄関に一旦リアンを座らせた。
「おーいー、靴、脱げよー」
「…うん…」
もぞもぞと靴を脱ぐと、らしくなく玄関に靴を放った。いつもならきちんと揃えるくせに。それをリアンに代わり俺が揃える。ついでに上着も脱がせ、バッグも一旦下ろす。改めて肩に担ぎ、自分のベッドへと向かうとリアンを放り投げる様に沈めた。
「もうお前はここで寝てろ」
電灯を常夜灯に切り替え上着とバッグを置くと、ベッドルームのドアをそっと閉じた。
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ぷしゅ…っと水色の缶を開ける。ちょっとだけ飲みたい時に開ける、アルコール度数の低い缶チューハイ。サイダーテイストのそれはそこまで甘くなく、丁度良い。
ローテーブルの前に座り缶を置く。テレビでも観ようかと、ローテーブルの片隅に置かれたリモコンスタンドに手を伸ばした。テレビを点けるが、大して面白くないと即消した。リモコンスタンドには他にミントタブレットと未開封の煙草が1個入っていた。
煙草は滅多に吸わない。あまり吸いたいとは思わないのだが、ごく稀に吸いたい気分になるのか数回程度吸った事がある。ただリアンが嫌煙家なのを知っているから、リアンの前では吸った事はない。
この煙草もいつからここにあるのかわからない。パッケージに記載されている賞味期限を見てみれば、もう今月いっぱいの物だった。
吸おうかと思ってみたが、アッシュトレーは見当たらないしジッポもどこに仕舞ったか覚えていない。これはあれだ、吸うなと言う事だ。諦めた。
サイダーテイストがほんのりしみる。
そう言えば、リアンと今年で何年目だ?あまりにも当たり前の様に傍に居てお互いをサポートして来たが、そうかもう9年越えたか。お互いに子供の頃など知らない。軍事学校で初めて出会い、いつしか背中を任せられる様になっていた。
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