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──『この小屋を拠点にしよう。屋根が斜めになっている。上手く呪符で発破を掛けられたら、屋根に積もった雪でユーディアルライトとシンハラさんを分断出来るかもしれない。遠隔操作の札を使おう。屋根には起爆の札を仕込み、アイゼンには起動の札を渡す』
居酒屋で、遠隔操作が出来る2枚1組の爆破の呪符をリアンから見せられていた。自分が使う事により威力は格段に落ちるが、求めていた効果には充分だった。
『南エリア8中層狙撃より通達!敵1名、被弾確認!』
『補正より、想定通り続行』
アイゼンのヘッドセットからリアンと補正指示に就いている黒曜の声が聞こえた。ここからは見えないが、すぐ側での遊撃2班班長撃破を告げていた。
──『他の班員を排除していけば、いずれシンハラとユーディがアイゼンの元へと来る。ユーディ主体で来るだろうから、最後にシンハラを落とせば…』
「さぁユーディ。以前は共闘だったが今日は違う。サシでの勝負だ」
──『最後にシンハラを落とせば1対1になれる』
潜伏出来ない限られた空間、重装備をしない遊撃班。相手は自分よりもかなり小柄な遊撃班員。戦場において軍人同士であれば互いに手加減などしない。例えそれが男女であってでもだ。
アイゼンのハンドガンがユーディアルライトに向けて発砲されるが、それは命中しない。慣れないガンにアイゼンは苛立ちを感じる。反面、ユーディアルライトは遊撃故にハンドガンに慣れていた。ユーディアルライトのハンドガンがアイゼンに向けられる。
──ちっ!めんどくせぇ!
アイゼンは持っていたガンを左手で持ち変えると、ユーディアルライトのガンに向けて投げ付ける。刹那、ユーディアルライトのガンが発砲したが、投げ付けられたガンのせいで弾き飛ばされ、軌道がずれた。ペイント弾は床に着弾した。
カラカラ、と2丁のガンが床を滑る。それはもう2人の手の届かない場所に居る。ガタン、と派手な音が響く。アイゼンはバリケードを踏み台に飛び越え、模擬ナイフを片手にユーディアルライトの懐へと潜り込んだ。ユーディアルライトの予備ハンドガンは間に合わない。
派手な蛍光色が辺りに散らばる。ユーディアルライトの胸部に取り付けられたペイントパックから蛍光塗料が飛び散った。ユーディアルライトの胸部とアイゼンの頭部、床が派手に染まった。
「…拠点より通達、敵1名、撃破」
ヘッドセットにアイゼンが声を零した。直後、演習施設に演習終了を告げるサイレンと、第6小隊員の歓声が響いた。
「…何で?」
ユーディアルライトは疑問を口にしながら床に転がっている2丁のガンを拾うと、自分の物はホルスターに仕舞いもう1丁をアイゼンに突き付けた。
「アイゼン!何であんた、髪色が違うんだよ!」
「あぁ、これ?ウィッグ。ウチの隊長殿が被っとけって寄越して来た」
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