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「おーい、君は逃げなくて良いんですかー?」
手榴弾ではなく、スタングレネードを手にした榛原はそう声を掛ける。抵抗するなら殺めて良し、離脱なら離脱させろ。それが榛原とユーディへの指示だ。
窓際に居る男の髪が外からの光を受けて青く透ける。実際には青くはないのだろうが、光を浴びる事により青みが強まるカラーの様だ。その短い髪は榛原と同じくらいの長さ。見た目は少年だった。だから宣告をした。
「…逃げる?そうね。私もあっちへ行くべきかもしれないね」
──女か?
少年に見えたのは髪が短いから。実際には女だった様だ。これだけ騒ぎになっていても動じない。榛原は覚る。
──この女、上層だな。
ただ、この状況下で抵抗する様子を見せない。見た限り、ハンドガンの様な武器は見当たらない。暗器なのか、それとも。
瞬時の判断を迫られた。榛原は左耳のヘッドセットを指で2回、軽く叩く。
「ねぇ、外で暴れているのは貴方の仲間かしら?」
「ここからは見えないけれど多分そう。僕の上司と間接的な同僚…ってところかな」
「じゃあ貴方は中央の人なのね」
「いや、僕は別。何?彼に何か用事?」
女がデスクから下りる。開放された窓枠に腰を掛け改めて外の様子を伺った。
「…リアン君、こんな所に来なければ良かったのに」
女は静かに何かを取り出した。それは1枚の紙。
──札!
榛原が気付くが間に合わない。
『アイゼン!レキを捉えろ!』
シュタールの通信と同時だった。女がふわり、と身体を後ろに倒す。重力に従い女が窓から落ちた。
「──!」
解放宣言が聞こえ、開いた窓から強風が吹き込む。同時に閉まっていた窓にライフルが撃ち込まれた。
榛原が窓から階下を伺う。女は風の呪符を行使し、榛原から離脱をした。
「通達!呪符師の女を発見。高レベルの女だ。そいつはリアンを狙っている!」
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