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翠は、倒れている遺体に近づき手元を見た。
手元には、広卵型の葉が握られている。
手に取り、触ってみるとかさついた感触がした。
「……なんでこんなものが?」
そう呟いて、その葉をハンカチで軽く包んでポケットに入れた。
翠は、部屋一面を見渡す。
ふと、壁のある一角に目が行った。
近寄ってみると、壁には大きな長方形のあとがある。
長方形は白く、壁はそれよりも少し色褪せて見えた。
そして、白と色褪せた白の間には乾いた血が付着していた。
(なんだろう……?)
その疑問は、解けないまま、翠は今度は庭へと出てみる。
「お嬢さん、あんまりうろつくなよー?」
そう西村が注意するが、聞こえないフリし、
庭へ出てみた。
広い花壇があり、野菜や花が植えてあるが、その周りには雑草が生い茂っていた。
(手入れしていないのかな…)
花壇の端に目をやると、紫の実がなった雑草が生えている。
その雑草の葉っぱは、広卵型の葉で先程被害者が持っていた葉と酷似していた。
翠は、ポケットから例の葉を取り出し、雑草の葉と重ねる。
偶然にもそれはピッタリと重なった。
「これは……」
翠は、その雑草を……というより、その紫の実を取った。
リビングへ戻ろうと窓の方へ向かった時、視界の隅でドサッと何か重いものを落とす音が聞こえてきた。
横を見ると、先程まで無かったゴミ袋が置いてあり、周りには誰も居なかった。
「なにこれ……?」
手を伸ばし、結び目を解く。
中からは、シワシワになったカレンダーが出てきた。
カレンダーには僅かに乾いた血が付着している。
(カレンダー…?)
カレンダーは長方形で、日月火水木金土……という風に並んでいた。
(これ……どこかで)
翠は、カレンダーを持って入ると、あっと声を漏らした。
長方形の跡が残った壁にそれを重ねてみると、それは4月4日を指していた。
4月4日……?
実際、今は4月ではなく3月だ。
(何を指しているのやら)
翠は、ソファーに座り、鞄から紙とシャーペンを取り出し、カリカリと今分かっていることを書いていく。
・凶器の石時計
・3人の容疑者とその関係
・紫の実と、広卵型の葉
・捨てられたカレンダー
・血が指す4月4日
・色違いの壁
・異常に眩しい室内
これらから見えてくるものは____何も無い。
「……何か足りない」
ボソリと翠が呟いた時、今の今までうんうん唸っていた、西村、絵梨、南の3名の内、南が「あっ」と声を発した。
「どうしたの?」
「いや、大した事じゃ無いんすけど_____この3人、全部苗字に動物の名前が入ってるなぁって」
「ん?どれどれ__ほんとだぁ!」
「でかした!南!」
西村は、ガシガシと南の頭を撫でる。
いや、撫でると言うより髪の毛を乱しにかかっている。
「…ちょ、西村さっ、強い…!」
「おっと、すまんすまん」
西村は悪びれた様子もなく、豪快に笑っている。
翠はまた情報を整理する。
動物の名前…………
「そういうことか……」
全てが繋がった。
犯人はあの人だ。
翠はニヤリと笑い、ソファーから立ち上がり、三者の前へと立ちこう言った。
「この事件、解けました」
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