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「ほんとか!?」
「ええ」
翠はそう言って、ポケットから、先程摘んだ紫の実を取り出す。
「まず、この実なのですが__」
紫の実を前に、3人は首を傾げる。
「何これ?ブルーベリー?」
「にしては、丸長くないか?」
「なんかナスっぽいっすね」
三者のそれぞれの言葉に、翠は答えを言う。
「半分正解です。これはナス科の植物で、名前はイヌホオズキ」
『イヌホオズキ?』
聞き慣れぬ名前に3人は首を傾げる。
「雑草です」
『雑草!?』
今度は3人同時に目を開き驚いている。そんな様子に、思わず吹き出しそうになるのを堪える。
「イヌホオズキかぁ……あ!」
「どうしたんすか?絵梨さん」
「イヌホオズキって"イヌ"ってつくじゃない?ってことは犯人の名前にイヌがついてるんじゃ…」
「ってことは、戌井さんが犯人ってことっすか?」
2人の推理を破るのは、部下から何やら報告を受けていた西村だ。
「残念ながら戌井はシロ。死亡推定時刻の際アリバイがあり、それを証言する人が何人もいた」
『振り出しかぁー』
2人はそのまま近くにあった机に突っ伏してしまった。
翠は、一つため息を吐き、2人を立ち上がらせ、ある壁の前へと促す。
「この壁を見てください」
翠がそういうと、絵梨達は壁をじっと見つめる。
「あっ…」
「ここ色が違う!」
「そうです、そしてここにはカレンダーがあったようです」
「カレンダー?」
「はい」
翠は、捨てられたカレンダーを壁にかける。
そして血が付着している日にちを指さした。
「4月4日?」
「そうです」
と、今度は南がどうやら閃いたようで、あっと声を発す。
「語呂合わせとか?」
「じゃあ獅子?」
「でも、名前に獅子がつく人なんていないじゃん」
「そうっすね…」
南はガックリ肩を落とす。
翠は、説明を続ける。
「カレンダーって12月までありますよね」
「そうだね」
「容疑者の名前には全員動物の名前がありますよね?」
「うん……?」
「12と動物…………何か思い当たる節がありませんか?」
『……あ』
翠がそう言った時、以外にも3人は聡いようで、すぐに翠の言いたいことが分かったようだ。
『十二支だ!』
「正解です」
そう、全員の言う通りこのカレンダーの数字は十二支に関係している。
「4番目の動物は兎だし、4月は卯月とも言うからやっぱり卯月凛さんが犯人?」
「いいえ、それは違います。卯月さんの身長は佐倉さんとほぼ同身長、対して相手は190cmはある大男。凶器に使われた石時計は重く、小柄な女性が振り上げるには大変なものです」
「そっか、それを頭部に直撃させるには座っている時か、椅子から腰を上げた時くらいだもんね」
「確かに、被害者はソファーや椅子から離れた所に倒れていたし、卯月さんなら引きずることは難しい」
「そうです」
「__となると、犯人は龍宮さんになるが」
「翠ちゃんの推理聞きたいなぁ」
「そうっすね」
「分かりました。続きを話しますね」
次に翠は凶器の石時計をテーブルに置いた。
「昔の時間には十二支の名前に"刻"が付けられてました。それを応用し、十二支を月以外に時計に当てはめるとします。そうすると……」
「このようになります。見ると卯は3時、4とは関係性が無くなります。」
「4に当てはまるのは、辰。辰は龍を表しますよね。」
「なるほど、それで龍宮さんが怪しいと?」
「そうですね、ですがこれはあくまで現場に残された物から推理した、憶測に変わりありませんので。」
「確かに、そういう考え方もあるな」
翠が説明し終えると、一同は立ち上がり、西村は、龍宮を事情聴取に、絵梨は自販機へ飲み物を買いに、それぞれ出て行った。
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