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解読探偵 BtC
珈琲の芳ばしい匂いが漂う店内。
カウンター席には青年が優雅に読書をしながら白い湯気が立ち上る珈琲を口にする。。
テーブル席には2人の男女が談笑しており、その一番端、窓際には、不思議な雰囲気を纏う一方でその顔立ちには少し幼さも感じられる女性が一人。
喫茶日向。
それがこの店の名前である。
この店の店主の日向洋はマグカップを拭きながら、四者の様子を眺めている。
テーブル席の男女のうちの女性、彼女は、佐倉絵梨。
見目は幼いが、現在大学3年生だ。
噂話が大好きだが、童顔で低身長な為、中学生と間違えられることがしばしば。
「南くーん、何か面白い話無いー?」
「ありませんよ、何か事件があればいいんすけど……」
南と呼ばれた男、彼は絵梨の一つ下の後輩で、現在大学2年生の倉田南。
顔立ちは整っているが、喋り方も軽い為、初対面の人には軽薄な男と捉えられる。
本人曰く、軽薄そうな見た目とは裏腹に、好きな人には一途なタイプらしい。
「お前ら、仮にも解決する側なんだから、事件起きろなんて言うなよ」
2人の話に釘を刺す男性は、カウンター席で珈琲を飲んでいた、現在大学4年生の、相原蒼だった。
見た目は好青年だが、蓋を開けて見れば鬼神が出てくるらしい(南 談)
自分にも他人にも厳しいが、その分人を見た目で判断しない性格である。
「えー、だって、ここ最近何も無いんですよ?」
「そっすよ、俺暇すぎて、暇すぎて」
「いや、南先輩に関しては仕事があるのでは?」
そうつっこむのは、テーブル席の端で、読書をしていた、この中では最年少、高校3年生の立華翠だ。
南や絵梨よりも遥かに大人な性格をしており、本当に高校生なのかと疑う程だ。
彼女は読んでいた本を閉じ、店主に珈琲を注文する。
「洋さん、アイスコーヒーを」
「ホットコーヒーでなくて宜しいのですか?」
店主がそう問うと、翠は蒼の方を横目でちらりと見る。
「なんだ?」
それに気づいた蒼が不機嫌そうに半目で問うが、翠は視線を元に戻しそれを無視した。
「アイスコーヒーで」
翠が店主に注文すると、蒼は席を立って翠の前に乱暴に座る。
「お前、俺がホットコーヒー飲んでるからアイスにしたんだろ」
「ええ、おじさんと一緒のものは飲みたくありませんので」
翠はツンとした態度でぷいっとそっぽを向く。
「誰がおじさんだ。まあ俺だってお前みたいなお子様と同じものを飲みたくないからな」
翠は蒼の言葉にムカッとし、声を荒らげながら言い返す。
「はぁ?誰がお子様ですか!私がお子様なら貴方は雷オヤジですね!」
今度は蒼が椅子からガタリと音を立て立ち上がり、翠に向かって言い返す。
「は?誰が雷オヤジだ!ならお前は_____」
「……まーた、始まった」
「どうにかならないんっすかね」
絵梨と南は2人の喧嘩にため息をつく。
そう、この二人を見て分かるように翠と蒼はすこぶる仲が悪い。
そして二人がこうなったのは、翠が高校2年生の時に遡る……。
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