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その十六 よーしたまには買い物だ
先日の出来事はあまりにも僕の元々あったゲームの出来事と違っていて驚いた、何が原因でこうなったか分からないが何かが違っている。
「うーん、考えても分からない……そもそもカナード王子ってのが謎なんだよなぁ。まあ僕がクリアしてないだけなんだけどね」
僕は独り言を呟きながら、どう動こうか考えていた。しかし一向に応えは出ないので仕方なく気分転換に何かしようと考えていた。
「そうだ、ニーナと買い物にでも行くかな。いつも頑張ってくれてるニーナに何か買ってやろう」
僕はそう思いつきベルを鳴らしニーナを呼び出す。
――
――――
少しするとニーナがやってきた。
「王子何か御用ですか?」
「ああ、今日は休みだからね。気分転換に買い物にでもと思ったんだ」
「では、お仕度と護衛の手配をすぐにしますね」
く……たまに忘れるんだが僕は王族だった。護衛とかいらねーしと思いつつそうもいかないのか
「うーん、護衛かぁ……ニーナと二人で出かけようと思ったんだけどなぁ。そうか、王族だし護衛いるのかぁ」
僕が何気なしにそうつぶやくとニーナの顔色が変わったように見えあ。
「ささっと、パパっと、
チャチャっと支度しますね!」
そういうとニーナは急いで僕の外出用の服を出し、自分の支度も整えていく。
ん? 護衛の手配は?
「支度は良いけど護衛の手配は?」
「護衛? 王子何言ってるんですか」
え? さっき護衛の手配がどうとか言ってなかった?
ニーナは自分の胸をドンと叩くと満面の笑みで言った。
「ふふん、王子よく見てください!」
「んー? うん多少は育ってるようだね」
僕はニーナの胸を凝視してそう言った、大きすぎず小さすぎずなかなかじゃないかな? 生前の僕は……くそ! 負けてるじゃないか!
僕の言葉にニーナは慌てた様子で身を引く。
「ちちち違います! どこみてるんですか! 王子の目の前にいるじゃないですか護衛が」
「ニーナが僕を護ってくれるのかい?」
「ふふふ、実は私凄く強いんですよ」
「本当かい?」
「本当ですよ!」
ニーナはそう言うと短剣を取り出し、構えて見せる。
知ってるよニーナが学園で凄く頑張って鍛えてることを、僕のために強くなってくれたことを凄く嬉しく思う。
「ふふ、頼りにしてるよ」
「任せてください!」
――
――――
こうしてニーナと僕は城下町に繰り出すことにした。
ランチは済ませて出てきたので、まず適当な店を覗くことにした。
「僕は気分転換に来ただけだし、ニーナは何か見たいものはある?」
「そうですねぇ……」
顎に人差し指を当てて考える仕草が妙に可愛らしい。まあ、今なら僕がやっても様になるだろうけどね。
「短剣が見に行きたいです! 武器屋に行きましょう」
「……あ、あぁ、うん。わかった」
もっと女の子らしいお店とかじゃなくていいのね。
ニーナが良いて言うなら武器の店に行こうじゃないか。
ニーナは迷うことなくすいすいと道を歩いていく、慣れ親しんだ道のようだ。
しばらくすると、味のある少し古びた建物に着いた。
「ここですよ王子」
「そう言えば武器屋なんて初めて来たなあ」
武器屋なんて用事無かったからね!
ちょっとワクワクしている自分がいる、うん元はオタク女子だったからね、そう言ったものにも興味はあるのさ。
とりあえず二人で店に入ることにする、建物は古めだが中はそこそこ広く思ったより綺麗だった。
すると短髪の厳ついいかにもなオッサンが出迎えてくれる。
なんといいますか、どの作品も武器防具屋と言えば八割ゴツイ親父だよねー、なんでだろ?
「よぉ、嬢ちゃん」
「やあ、親父」
親父は僕の方を見るとニヤニヤと笑い。
「なんでぇ、今日は彼氏連れかい?」
やっぱ親父ってそういうこと言うよね! お約束過ぎて御礼言いたくなるよ。
「やだー、違いますよー」
このニーナの反応までがテンプレですねわかります。
「じゃあ、なんだい?」
「私がお仕えする方ですよ」
「ほー」
これは主として挨拶すべきかな?
「うちのニーナがお世話になってるようですね。ぼく……私はニーナの主のカナードと言います」
「いやー、ニーナちゃんは……え?」
「ん?」
親父が首を傾げた、何か変な事言ったかな?
「カナード? カナード……かかかカナード王子殿下!」
「え、えぇ。そうですが」
親父はカウンターから飛び出すと僕の前で首を垂れる。
「ちょっとちょっと親父さん! 何してるの? 頭上げて頭」
王族とはいえ田舎の小国の王子よ。しかもなーんの取柄も無い第二王子っすよ! って一般の人には王族ってだけでこうなるのよねぇ。
「しかし、王子殿下だとは知らずご無礼を」
「いいよいいよ。僕はそういうのは苦手でね普段通りにしてくれないか?」
「あー、いやー、その……はぁ、わかりました」
親父は観念してカウンターに戻ると僕たちに話しかける。
「それで、お嬢ちゃんとカナード王子は何を見に来たのかな?」
「短剣ですよ」
「まあ、気が済むまで見てってくれ」
親父がそう言った矢先に、ニーナは嬉々として短剣が置いてあるコーナーへと向かった。
「へぇ、結構色々あるんだなぁ」
「はい! 短剣と言っても用途も様々ですので色々とあるんですよ」
ニーナは刃が黒く塗ってある四〇センチほどの短剣を手に取ると、握りの部分を丹念に見たり握ったりして確かめている。
「これなんて刀身が黒くなっているので光を反射することが無く、暗殺などに向いているつくりなんですよ」
ニーナは屈託のない楽しそうな表情で、なんだか僕に物騒な説明をしてくれている。
年頃の娘がそんなんでいいのかとは思うけど、ニーナの楽しそうな顔が見れて僕は満足な気持ちになっていた。
「ニーナは日頃から僕のために頑張ってくれてるからね、どれか一つ僕がプレゼントしよう」
僕は当初の予定通り何かをプレゼントするつもりだったので、ここでニーナにそう言ってみた。
本当は何かもっと女の子らしい物が良かったのだろうけど、ニーナは真剣に短剣を吟味していたので好きなものを買ってやることにする。
「え? 本当ですか! 王子ありがとうございます!」
ニーナは満面の笑みで僕にお礼を言う、ほんと可愛いなあこいつ。
そしてニーナは店の親父の場所に走っていく、どうやら既にめぼしい物があったようだ、僕もニーナの後を追って親父たちの所へと向かった。
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