その三 世話係?

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その三 世話係?

 私の婚約が決まった数日後の事。 「おはようございます、カナード王子」  私の部屋に同じくらいの歳の女の子が私を起こしに来た。 「んー、ううん」 「お目覚めですか?」 「あぁ、おはよう……ところで君は誰?」  大きな目がクリっとした活発そうな雰囲気で、黒に近い茶色のセミロングの女の子が立っていた。  なかなかに愛嬌が良さそうで可愛らしい子だ。 「はい! 私は本日よりカナード王子の御付きとなったニーナ・イネスと申します」  うちの親は悪い人達ではないのだが……物事を勝手に決めすぎる。  専属の御付きとか行き成り言われても困るなぁ。 「先日私の母親を助けてくださり、有難うございます」  母親を助けた……まさか! 「母親って、ソニアの御付きをしていた女性の事かな?」 「はい! それが私の母のセイラ・イネスです」  ニーナがそういうとノックがして、その後先日の女性が入ってきた。 「おはようございます、カナード王子」  そういうとニーナの母親のセイラさんは私に挨拶をした。 「先日はありがとうございました。王子のおかげで新しくここで働くことが決まりました」 「ああ、それは良かった」 「はい、娘ともどもよろしくお願いします」 「よろしくお願いします」 「こちらこそ、よろしくね二人とも」  この子がゲーム内でのカナード王子の専属だったモブの女中の子なのね、モブのくせに妙にかわいい子だったけど、本当に可愛い子ねニーナって名前だったのね。  この数年この世界をカナード王子の視点で見ていたけど、ゲームではスポットの当たってないところばかりだから新鮮なのよね。ただゲームの知識は役に立たないけど……  ニーナは私のいた世界でも十分に可愛い部類の顔立ちをしているのよね。大人数アイドルグループでも十分センターやっていけるわよこれ。  まあ、母親のセイラさんを見れば納得なのよね。三十代前半らしいけどもっと若く見えるのよね、元の私と同い年に見えるわね……容姿レベルは……負けてるなぁ、だが私は今は超イケメンなんだぞ!  イネス親子は私の着替えなどを準備するために部屋を出ていったわ。  ゲームでは出てこない時代の話、私はどう立ち回るべきか考えちゃうわね……  しかし、ここで上手くやらないと私の未来は破滅しか待ってないのよね、とにかく私ことカナード以外とクレアが結ばれたら私はアウト、場合によっては国ごとアウト。  私の破滅を防ぐにはゲーム内では二つ、カナードがクレアと結ばれるか、隠しルートにクレアが進むか。個人的には自分が関わっていられるカナードルートに進めるのがいいのよねぇ、ただ問題は私は生前、カナードだけクリアしていないという事なのよね…… 「とりあえずは朝食にしよう」  私がそう呟いたところ二人が戻ってきた。  親子で私の世話係なのか? セイラさんにあれよあれよと服を脱がされる。 「さあ、カナード王子お着替えをしましょう」  いやいや、これは恥ずかしい! 身体は七歳の子供だけど中身は大人なのよー! 「うわー、大丈夫、それくらい一人で出来るからー!」 「ダメですよ王子!」  バタバタした朝が過ぎて行った。  ――  ――――  朝食を済ませると私は日課のランニングに出かける事にした。  これは生前からの私のオタク趣味以外の唯一の趣味である、たまにハーフマラソン大会にも出てるくらいには得意な事である。 「おや? カナード、今日もランニングかい?」 「ああ、兄さん。兄さんは弓の練習?」 「そうだよ、一日サボると戻すのに三日かかってしまうからね」 「真面目だな兄さんは」  私が兄ハインツと会話していたら女の子……ニーナが僕たちの所にやってきた。 「カナード王子! 私もお供しますー」 「え?」  ニーナは兄のハインツに気付くと急いでお辞儀をした。 「あ、これはハインツ王子。おはようございます」 「ああ、君がカナードの御付きになった子だね、カナードをよろしくね」 「はい!」  ハインツはニーナ相手に笑顔で対応していたわ。  とても十二歳の対応じゃないわね、流石モノホンのイケメンね。私はなんちゃってイケメンだから、こんな対応すぐには出来ないわね。  私もニーナも王国用の訓練服の子供用サイズを着ていた、訓練服って名前だけどようするにジャージなのよねコレ。 「ニーナ、君も走るのかい?」 「はい! お供します」  まあ、いいか。  私とニーナはハインツに別れの挨拶をすると城の周りを走り出した、本当ならもっと遠くまで行きたいのだけどね、そこは私って一応王子様だからね危ないって事で城の周りだけなのよね。 「ニーナ、ペースは速くない?」 「だ、大丈夫です」  私のペースは結構速いはずなのにニーナはちゃんとついてきているのが凄いわね。  三十分ほど走っていたがニーナは完全に私についてきていた。  私は城の前に戻ってくると足を止めた。 「はぁはぁ……ふぅ、よしニーナここまでにしよう」 「ぜぇぜぇ、はぁはぁ……は、はい」 「息が落ち着いたらストレ……軽く手足を伸ばす運動をして終わろう」 「ど、どうやるんです?」 「まずは僕がやってみるから、真似してね」  この国にはストレッチ運動が無いようなので、私は生前でやっていたストレッチをニーナに教えてあげた。  これが私とニーナの出会いであった。
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