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その五 自己紹介なんて華麗に……くっ!
学園に入ると同じ服を着た子供ばかりねぇ……まあ、それはそうか学園は制服で通うことになってるんだしね。
「王子! 皆さん私たちとおそろいの服ですね」
「ああ、うん。そうだね」
ここにも私と同じ思考の子がいたよ……ん? そうなると私って初級部レベルの思考回路?
私が悪いんじゃなくニーナが優秀なんだよ、うんきっとそうだ。
――
――――
入学式も終わり私たちはクラスに案内される。
そして少しするとクラスメイトの自己紹介が始まった、どこの学校も似たようなことをするものなのね。
貴族や豪商の子供たちとはいえやはり子供、かわいいものだね。
たまに憎たらしいガキもいるけどね。
次の子、男の子が教壇に立った……ん? どこかで見たような気がするなこの子。
前髪を指で異常な速さでクルクルと巻いている、ちょっとウザイなアレ。
「やあやあ、おはよう諸君!」
ウザイあの喋り方! そうかこの子がゲームでの攻略対象の一人ライネスだ。
ゲーム内だとアホの子なんだよなぁ、何故こいつが攻略対象なのか謎で仕方ないのよね、ゲームの掲示板でも謎とされていたわね。
「ボクはクルベス・テネフ宰相の王国宰相の! 息子ライネス・テネフさ、よろしくたのむよ」
無駄に白い歯を見せてニカっと笑う、流石作中屈しのウザキャラ……子供の時からウザイわね。
しかも宰相を強調してるし、こっちは王子だっつーの!
まさかここでヤツが出てくるとは……一応攻略対象だし、コイツがクレアとくっついても私に良い事は無いから注意したほうがいいわね、しかし警戒されるのも考え物ですし臨機応変にいきましょう。
「オーッホッホッホ! さて、次は私ね。私はユリアーナ・コルツ。 カイン・コルツ辺境伯の娘です」
あらー、この子も同じクラスなのね、ソニアともう一人の悪役令嬢。
ただ、この子の場合は悪役気取りの残念な子なのよね、というかその歳でもうあんな口調だったのねこの子。
まあ、この子とはある意味で仲良くしておく価値はあるわね。
しかし、辺境伯? ゲーム内ではこの子は伯爵令嬢だったような?
仲良くする価値……ふ、自分の保身ばかり考えている嫌な大人の思考ね。
この後も数名の生徒が自己紹介をしていたわ。
さて、私の出番のようね。王子は華麗に自己紹介を決める!
「……え、えーと。あのー」
む、あれ? おかしいなビシっと自己紹介するはずなのに身体が上手く動かないぞ。
……く! しまった、元々私は人付き合いが得意じゃなかったんだ……そんな私に、これはキツイ……やめろ! 私をそんな目で見るな!
好奇と純粋さの視線が腐女子な私にはキツイ。
「ぼ、僕はア、アズミ……」
ちが! 安住祥子って名乗ってどうするのよ。
「王子! ファイトですよ!」
ニーナの声が聞こえたような気がした、私はニーナの方を見ると私に向かってニッコリ微笑みかけて口の動きだけでそう言っていたのだった。
本当にこの子がいて助かる。
「コホン、失礼、僕はカナード。カナード・セレアス。このセレアス王国の第二王子です。皆さんこれからよろしくお願いしますね」
ここで会心の笑顔! 喰らえ美少年スマイル! くー、決まった。
第二王子って言葉と私の笑顔に一瞬教室が騒めく。ふふ、この笑顔に既に数名の女子がやられているわね、そして一部の男子も顔を赤らめて下を向く。むう、その歳で既に男色の気があるのはヤバイわよ。
「王子! かっこいいです!」
ニーナの声に私は手を上げて答えた。
そしてニーナが次の番だった。
ニッコリ笑顔で優雅にお辞儀をする。
「私はニーナ・イネスと申します。カナード王子の従者をさせてもらっています。まだ未熟者ですが皆さま宜しくお願いします」
とても良い笑顔で挨拶をする
あー、もう本当に妹に欲しいなあこの子!
ニーナの可愛さに心の中で悶えている間にニーナの紹介も終わっていた。
まさか同じクラスに重要人物が二名もいたなんてね、そう言えばクレアがいないわね。
違うクラスなのかしら? いや、そうかそうだったわね。
クレアは確か地方貧乏騎士の娘で、中級部までは違う学校に行っていたのだったわね。
そして水の巫女候補になることによって、この学園の上級部に来るんだったわ。
ソニアは違うクラスなので良かった良かった。
しかしニーナがいてくれるのはとても心強いわね。
重要人物二名、特にユリアーナはある意味重要な位置にいるわね。
なにせカナード王子が自分のシナリオ以外で助かるのはこのユリアーナーの隠しシナリオだけなのよね、ええ、私が一番最初にクリアしたキャラなのよ。
掲示板でネタバレだけでも見といて本当に良かったわよ。この知識があるだけでも誰ルートがいいのかわかるしね、カナード王子のネタバレも当然見ちゃってるわよ。
クリアしてないけど、エンディングだけは知ってるってのも何か悲しいけど今は感謝しておきましょう。
とりあえずは、久しぶりの学校生活を大人の余裕をもって満喫しましょうかね。
自分の未来を知りながら送る生活ってのは地味にキツイものだなぁと最近よく考えちゃうから、せめて安全な時期は楽しく美少年ライフを送りたいものだね。
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