レベル2

2/5
前へ
/31ページ
次へ
しかし彼女の容姿は限りなく普通だった。 普通よりか構わない位、服装に頓着なかった。 黒のリクルートスーツいつまで着てるの?ってふざけて聞いた事がある。 「え?替えてるよ」 いやいや何着同じの持ってるんだよってツッコむと、彼女は笑いながら 「朝、考えなくて良いから」 そう言いながら休憩時間、自販機でどれにしようか悩んでる姿。 それで何となくキャラが分かった。 的確な判断が出来るクールなイメージと裏腹に、自分の事には長考タイプ。 だからあえて考えない様に、プライベートな選択肢を狭くしている。 彼女は俺の中で、弄りキャラだった。 鈴菜が女に変わったのは、3、4ヶ月前の事だ。 遠方から来た取材対象者をホテルに案内した時、鈴菜と若い男を見かけた。 見覚えのある男は、彼女の腰に手を回していた。 明確に自分の女と誇示する様な仕草で。 うちの会社には、託児室がある。 運営は外部に委託している。 他の所より利用料は高いが、子供の具合が悪くても隔離場所と看病してくれる専任の保育士がいるので、託児が出来ると一部の利用者には好評だ。 立ち上げ時とその後の利用状況を取材した事があるので、他の独身社員より知っていた。 鈴菜の子供は、立ち上げ時から毎日利用している。 そこで育ったと言っても過言ではない。 立ち上げ時は、やり手の女性保育士が責任者だった。 その後利用者が固定化してきたら、穏やかな感じのイケメン保育士が着任していた。 それが鈴菜と一緒にいた男、小泉遼太郎だ。子供を相手にしているせいか、やけに若く見える。 インタビューで年齢を聞いたら、俺より2つ年上。 あの日以来、トゲが刺さった様になっている。 鈴菜とは最近、広報が使う制作会社との契約書改定等、仕事で絡むことが多い。 なのに以前みたいに弄れない。 軽口を叩けない。 口を開いたら、口汚く追及してしまいそうだ。 そんなイライラが、今夜の仕業に繋がった。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加