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俺の実家は現代にしては大家族だ。
祖父母に両親、年が近い姉2人が同居していた。
姉ちゃん達を見てきてるから、女がどんなもんか分かるし、下っ端なので空気を読むのは得意だ。
生まれ育った町は、大規模な漁港ではなかったが、漁獲量が安定した港を持っていた。
祖父と親父は漁師、祖母は海女、母は水産物の加工所で働いていた。
海から帰った祖父の相手は専ら俺。
晩酌しながら俺と将棋を指すのが、何より楽しみな祖父。
祖父とは寝室も一緒だった。
祖母がイビキの酷い祖父と一緒に寝るのを嫌がり、
「じいちゃんは、圭ちゃんに任せるわ。もう年だから安眠したいだに」
と姉達と寝ていた。
そんな穏やかな俺の日常に、叶えたい強烈な希望が湧いたのは、中学の時だ。
小さい時から祖父とやっていて、それなりにハマった俺は、地元の将棋会館に所属していた。
中学の時、全国大会に出られる事になり、会場は東京だった。
初めての東京。
母と前泊し、対局前の気晴らしに街を歩いた。街も人もキラキラしていた。
育った町とは、全く違う。
女性は小綺麗だし、男の人もシュッとしていた。
海の男みたいに色黒な、体格がガッシリしてる人は少なかった。
その当時、色白でヒョロガリな自分がコンプレックスだった。
将棋が好成績なので、学校の部活には所属せず放課後は会館に向かった。
又、親譲りの下がり眉も気に入らなかった。全体的に泣き笑いしてる様な印象を、いつも人に与えてしまう。
そのせいか女子の友達が多かった。
姉達がいるので、女子達がどうしたいのか、とう振る舞って欲しいのか手に取る様に分かった。
彼女達は、自分の話やコイバナを聞いて欲しいのだ。
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