あと5分だけだからね

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二人きりだからこそ聞こえる  君の小さな呼吸音。 かすかに上下する布団を見つめるのが、なんとなく癒やされてしまう。 あと4分30秒・・・29・・・28・・・27・・・ なぜか心の奥底でカウントし、眠る君をずっと見ていたいと思う名残惜しさの反面、おはようを言いたい気持ちも膨らむ。 不思議なことに君は、5分より少し前に起きるんだ。 まだまだ眠たそうな顔で、私を見上げて  今にも消えてしまいそうに 「・・・おはようっ・・・」と微笑む。 その顔が何とも言えずキュンと来て、私もつい「おはよう」と笑顔で返してしまうのだ。 一度だけ たった一度だけ試したことがある。 あのお伽噺のように 口づけをしたら  君は時間通りに起きるのかって。 立場が逆だから少し変に思えたけど・・・無防備に気持ちよく眠る君に、何かが我慢できなかった。 ほんとに一瞬だった。 一瞬だけ  柔らかくて  温かい感触が当たって・・・君はモゾッと動き出した。 「・・・んんっ・・・ーー?」 若干焦る私としばし見つめ合うと、君はこう言う。 「・・・あと・・・・・・5分・・・」 いつものようにまた潜り込んでしまった君に  私はいつものように言った。 「はいはい  あと5分だけだからね」 眠りに入った君の頭を、いつになく私は愛おしく撫でていた。
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