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けたたましいアラームを消すと共に、カーテンを半分だけ開け、光を取り込む。
まだ新しい香りがする部屋が、朝色に染められていった。
「ほら起きろーねぼすけー」
「んんーー・・・」
私が隣で布団を揺すっても、君は気だるそうにモゾモゾと動くだけで、起きる気配がしないんだ。
「もーー 遅れちゃうよ!」
私はアンタの母ちゃんかっ!!と言わんばかりの起きてコールを繰り返す。
やがて 「うぅ~ん」と唸る声が聞こえたかと思うと、四方八方に跳ね上がった黒髪と、寝床から這い上がるハムスターのような顔の君がヒョッコリ出てくる。
初めて一晩を過ごした日もそうだった。
君が超がつくマイペースなのはよく知っていたし、主導権を上手く握れないから、私が君をリードするはめになることも予想がついていた。
初めての感触に、ただ恥ずかしそうに顔を赤らめる君が いじらしくて可愛くて・・・それで朝になって、昨日のことがなかったかのように自然体に戻っていた君に、終始驚きを隠せなかったし、逆にそこがキュンとしたのかもしれない。
夢か現実か分からないような瞳で私を見つめた後、君は決まってこう言うのだ。
「・・・あと・・・5分~・・・」
君はいつだってそう。
朝がとんでもなく弱いのだ。
5分寝たって、さほど眠気は変わらないだろうに・・・
そのうちモゾモゾと布団に顔をうずめて、君は目をつぶってしまう。
その顔が、どこかのお伽噺の王女を彷彿させるほど、透き通っていて美しいと感じているのは、君には内緒だ。
私は、わざと呆れたように言う。
「はいはい あと5分だけだからね」
そうして さりげなしに髪を撫でると、君はくすぐったそうに微笑む。
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