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メゾネットのマンションなので、いちいち階段を登りおりしなくてはならないのが面倒だ。
なぜ決める時普通のにしなかったのだろうと毎日思う。
「おはよう」
「んー、おはよう」
とっくに用意された朝食を食べていると、母は独り言のように話しかけてくる。
「今度の期末テスト、勉強してるの?」
「うーん」
「前は良かったけど、たまたま、なんてことにならないようにしてよね?」
「はいはい」
試験勉強くらい毎日やっている。結果だって、上から数えた方が早いのに、どうしてこんなにぐだぐだ訊いてくるのだろう。
私を将来医者にでもしたいのだろうか。
でも、成績のことを聞いてくるうちはまだいいのだ。
たまに、一週間に一度くらいに、一番関わりたくないことを訊いてくる。それは何かというと…
「そういえば、最近小夜ちゃんとはどうなの?」
うっ、と卵焼きが喉に詰まりそうになった。
ゲホゲホと咳き込んでしまい、慌てて麦茶を注いで飲み干した。
「ちょっとどうしたの?」
「なんでもない」
平静を装って答えた。
「そう、それで小夜ちゃんとはどうなの?」
小夜ちゃん…正確には、星崎小夜。
幼稚園の頃からの幼馴染みであり、このマンションの真下に住んでいる、同い年の女の子。
この子のことこそ、私が一番触れて欲しくないことだった。
「別に、普通だよ」
「普通って?」
「……普通に喋って、普通にいるような…とにかく普通!御馳走様!」
まだ食べ残っていたが、一刻も早く話題を避けたかったため、食卓を立った。
「ちょっと、まだ残ってるじゃない」
「いーの!行ってきます」
お前のせいだろ!と心の中で毒づきながら、荒々しくドアを開けて階段を駆け下りた。
そして足早に通学路を進んで行く。
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