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「ぅ、うぅーん」
学校が終了し、私は唸りながら伸びをして、約6時間の授業から解放された喜びを噛み締めていた。
木曜日の時間割は、課外授業が多いため移動がハードだ。教室棟、芸術棟、グラウンドを朝からずっと歩き回っていた。
席を立つと、「帰ろー」と舞たちが誘ってきた。いつもなら一緒に教室を出て、わざと遠回りでもしながら帰るところだったが、生憎今日はやるべきことがあったのだ。
「ごめーん、借りてた本返さなきゃだからまた明日」
「図書館?待つよそのくらい。あたしも借りたい本あるしさ」
弥生はもう進みながら答えた。「うんうん」と舞も同調している。
二人が待っててくれるのは嬉しいが、それは逆に、私にとっては不都合だった。
借りていた本の題名を見られたくなかったため、私は胸の前で手を振って答えた。
「いーよいーよ、実は、借りてたやつちょっとえっちぃやっだからさ」
「えー気になる!」
言えー、とつついてくる弥生をなだめて、私は図書館のほうに向かい歩いた。
「ごめんね、また明日ねー」
私は手を振りながら、いそいそと図書館棟に入っていった。
去り際に、残念そうな二人の顔が見えたのが、少し申し訳なかった。
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