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『ピピピピピ まひろちゃん おはよう 今日は 七月二日 木曜日 だよ』
機械的な音声が、私を心地よい眠りから引きずり出してくる。
「うーん」
目を閉じたまま腕を伸ばして、定位置にある目覚まし時計のスイッチをonにした。
そして再び、布団の中に引っ込める。
小学一年生になった日、記念にもらったキャラクターものの目覚まし時計を、もうかれこれ八年間も使っている。
最初のほうは自分の名前を呼んでくれるのが嬉しくて、毎日喜んで起きていた。
しかし、今はその抑揚のない声がうざったく感じてきていた。それは自分が成長した、ということも関係しているが、本当はもっと別の理由がある。それは…
「まひろ!」
バンっと音を立てて部屋のドアが開いた。
目を開けてそっちを見ると、そこには呆れたような顔をした母の姿がある。
「いつまで寝てるつもりなの?もう目覚まし鳴ってだじゃない…ちゃんと下にも聞こえてくるのよ?ほら起きた起きた」
そう言いながら、迷想中の私を問答無用でベットから引き剥がす。
「やめてよもう、毎日毎日部屋までくるの、メーワク!」
「そうでもしないと起きないじゃない」
「だって眠いんだもん」
口論しているうちに、目が冴えてきた。
「はいはい、制服はここにあるから、ちゃんと着替えて下に降りてきなさい」
そう言い残して、母は下へと降りて行った。
仕方ないので、私はわざとのろのろ支度をしてから下に降りた。
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