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イヴ
あれはいつのころだったか。
いろんな国の天才達が衆知を結集して、人間に限りなく近いロボットを創りあげた。
ロボットの見た目は美しい女性であった。
知能はもちろん、皮膚、臓器、筋肉、血管や細胞にいたるまですべて人工であった。
彼女はイヴと名付けられた。
イヴはとても優秀で、生活の中で日々学び、成長していった。
人間と会話し、笑い、食べ、庭を走り回り、疲れると眠った。
すぐに感情を我が物にし、怒りを爆発させたり、悲しみにくれたりした。
人間達はイヴにとっての敵にならないように、尊敬できる対象でなければならなかった。
イヴを愛し、なだめ、時に叱りつけ、迷ったときには手を差し伸べ、優しく導いた。
いつもそばにいる、と話し、人間に祈りを捧げるように教えた。
イヴは人間を愛し、畏怖し、崇め、毎朝祈った。
そのうちイヴは仲間が欲しいと言い出した。
家族、友達、恋人、それに子供。
人間達はまた数体のロボットを創った。
しかし赤ん坊だけはどうしても創れなかった。
イヴは子孫を残せないことを悲しんだ。
ロボット達は仕事をしたいと言い出した。
医者や政治家、宇宙科学者、研究家…。
ロボット達はもはや人間よりはるかに卓越した頭脳を持っているので、職を与える事は有意義な事と思われた。
人間達は喜んだ。
イヴはロボット開発者になった。
それによりロボットはさらに完全体になった。
そしてどんどん増えていった。
人間がけがをしたり、病気になったりすると、ロボット達が治し、看護した。
もちろん失敗などしない。
年老いた人間を介護し、死を見守った。
ロボット自身の損傷も、ロボット達の手で修復された。
地球の環境が徐々に変化して、人類が順応できず絶滅に向かっていく中、ロボット達はさらに増え続けた。
それからしばらくして、イヴはついに赤ん坊を創ることに成功した。
自分が受けたものと同じように、赤ん坊を愛し、育てることにした。
今はもう絶滅してしまった人間を神として崇め、自分達ロボットを"人間''と定義づけることにした。
それが…あぁ、そうだ。
今から千七百万年ほど昔の話だ。
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